健康で自立した生活が送れる期間を「健康寿命」と言います。2010年の日本人の平均寿命は女性が86・3歳、男性が79・6歳、健康寿命は女性が73・6歳、男性が70・4歳でした。平均寿命と健康寿命との差は女性で12・7年、男性で9・1年です。この期間は、不健康で自立した生活が送れず、誰かの支援や介護が必要になります。

年齢と歩行能力

 なぜ人は、自立した健康な生活を送れなくなるのでしょうか。一番の原因は脳卒中(22%)で、次に骨折や関節痛などの運動器疾患(21%)、認知症(15%)、高齢による衰弱(14%)が続きます。

 このような病気に罹(かか)らなくても、人の歩行能力は加齢とともに低下していきます。若い時にはスポーツを楽しめていた人でも、旅行や買い物で歩き回るのが困難になり、やがて隣近所に行くのがやっとの状態になります(グラフの(2))。このような時に脳卒中や骨折が起こると、車いすや寝たきりの生活になることもまれではありません(同(3))。脳卒中は5~6人に1人、高齢者の骨折は2人に1人の割合で生じます。

 では人生の最後まで自立した生活を送る(同(1))には、どうしたら良いでしょうか。血圧が高い人は、脳出血を起こさないように血圧を下げる治療を、骨密度が低い人は、骨折を起こさないように骨を丈夫にする治療が必要です。もちろん、糖尿病や高脂血症などがある人は、持病に対する治療は不可欠です。

 このような治療に加えて、さらに大切なのは運動です。運動にはさまざまな効果が認められています。例えば、運動すると骨が丈夫になります。関節や筋肉が柔らかくなり転倒しにくくなります。心肺系が鍛えられ息が上がりにくくなります。動脈硬化を防ぎ、高血圧、高脂血症、糖尿病を改善させ、心筋梗塞や脳卒中を予防します。脳を活性化し認知症を予防します。免疫力がアップし病気に対する抵抗力がつきます。ダイエットにも効果的だし、見た目も気持ちも若返ります。

 運動には良い意味で倍返しどころか、10倍返しの効果があるのです。しかも、すべて科学的に実証されています。

 運動の基本はやはり歩くことです。健康寿命を延ばすために、毎日10分以上の歩行、できれば早歩きが推奨されています。これは最低限の運動で、十分な効果のためには、週に3時間以上歩くことが必要です。

 運動は早い時期から始めるとより効果的です。いつから始めますか。今でしょ。(大湾一郎 沖縄赤十字病院)