県内基地で1946~66年に働いていた軍雇用員の労務管理カード約20万人分が県公文書館にあり、アスベスト(石綿)被害救済に向けた活用のめどが立っていないことが分かった。数が膨大で個人情報が含まれていることから、県と厚生労働省の協議は2011年以降棚上げされたまま。復帰前の軍雇用員の石綿被害救済は雇用責任が曖昧にされて進んでおらず、唯一職歴が詳細に残る「軍雇用員カード」が利活用されれば、救済への道が大きく広がる可能性がある。(篠原知恵)

 復帰前から1990年ごろまで基地内の作業で大量の石綿が取り扱われた。一方で、沖縄駐留軍離職者対策センターによると復帰前離職者で救済されたのは1人にとどまっている。

 カードは、軍雇用員1人ごとに(1)名前(2)本籍地(3)現住所(4)職歴-を記録。カードがある約20万人のうち石綿の被害者数は不明だが、職歴は詳細に記録されており、被害の可能性がある人を絞り込むこともできる。

 全駐労などがカードの利活用を求めたため、県と厚労省は活用法を模索したが認識で隔たりがあり、協議は中断している。

 厚労省によると、カードの閲覧者リストなどを提供できるか県に打診したが、県側は難色を示した。

 2012年11月の衆院厚生労働委員会で、中沖剛労災補償部長(当時)は「個人情報の問題で提供が難しいとの答えをもらった。重要な課題なので、県とカードの活用の可能性について話を進めたい」と答弁したが、その後協議は進んでいない。

 県公文書館は本紙の取材に「正式に断っていない。本庁と相談中に厚労省側から打診取り下げの連絡があった」と説明。「個人情報の問題はあるが、できる限り協力はしたい」とした。

 復帰後の離職者で石綿被害の可能性がある8717人には、防衛省が救済制度を案内した。一方で復帰前離職者は雇用主が米軍となり案内通知はされていない。

 全駐労沖縄地区本部の與那覇栄蔵委員長は「復帰前については国も県も責任感が薄い。宙ぶらりんな状態を強いられている間に、対象者の高齢化は進んでいる。一刻も早く利活用を進めてほしい」と求めた。