県経営者協会(安里昌利会長)主催の第28回県経営者大会が20日、那覇市の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハで開かれた。「グローバル時代を勝ち抜く企業経営」をテーマに、売上高2兆円を超える大企業や創業120年を超える老舗企業の経営者、少子高齢化社会の政策研究者、直木賞作家の4氏が登壇。国際競争に勝ち抜くため日本企業が歩むべき方向性を提示し、組織をまとめるリーダーの心構えを説いた。

人を喜ばせる会社に
大和ハウス工業会長 樋口武男氏

 創業者の故石橋信夫氏の夢「創業百周年に10兆円」の売り上げの実現に、グループ全体で取り組んでいる。

 石橋氏の創業理念である現場主義、何をしたらもうかるかでなく、何をしたら多くの人に喜んでもらえるかという視点は忘れない。

 石橋氏は21世紀を風と太陽と水がキーワードと言っていたが、風力や太陽光発電など、実際にそうなっている。

 世の中は変化のスピードが速くなっており、経営者は先の先を読まなければならない。変化の中にチャンスがある。実るほど頭を垂れる謙虚さも備えなければならない。

 企業の将来は人材育成にかかっている。社員との直接的なコミュニケーションでやる気を持たせることも大事だ。才能はあっても実力を発揮できないのは夢や志がないから。出会いで人は変わる。

 創業50周年の節目に新たなグループのシンボルマーク「エンドレスハート」を導入したが、アイデアは30代の若手職員に任せた。将来を託す人たちに関わってほしかったからだ。

 「アスフカケツノ」が羅針盤。コア事業の建築に加え、安心・安全、スピード・ストック、福祉、環境、健康、通信、農業の各分野で新たな事業を創造していく。社会に貢献し、持続可能な企業を目指していく。

老舗復活 社内にカギ
森下仁丹社長 駒村純一氏

 三菱商事などを経て2003年に森下仁丹に入社、06年から社長に就任した。経営状況は厳しかったが、仁丹製造で培った技術、ブランド力を生かし、立て直せるのではないかと感じていた。

 創業120年の老舗。創業当時は衛生環境が悪かった日本で、「予防医学」の発想で生まれた仁丹は大ヒットした。体温計やはみがきを売り出し、仁丹の輸出にも取り組むなど、創業者の森下博の経営手腕は評価されていた。

 ただ、2000年以降、看板商品の銀粒仁丹の売り上げは全盛期の10分の1に落ち込んだ。社内にブランドへの過信が広がり、当事者意識や危機感が失われていた。

 社員に意識改革を求めた。企業としての存在価値を問い、社会のあらゆる問題に関心を持つよう、時には厳しい言葉をぶつけた。外部から優秀な若手を管理職に抜てきしたり、組織をフラット化して社員と直接対話した。

 埋もれている技術にも光を当てた。液体の生薬エキスを包む「シームレスカプセル」の技術は医薬品、シロアリ駆除やレアメタルの回収、種子カプセルなど産業分野にも可能性が広がった。この技術を国内外に売り込んでいく。長い歴史を持つ企業には社内に復活のカギがある。既成概念や建前、前例からの自己解放が変革につながる。

鍛えた力で海外展開
関西大教授 白石真澄氏

 日本は法人税が高く、官庁の規制ががんじがらめにある。市場をもっと透明にしなければならない。労働力の確保も人口減少と少子高齢化で困難だ。

 日本人だけで必要なものをすべてまかなっていく時代は終わった。グローバル化に向けて、海外の人材をどう活用していくかを考えていくべきだ。楽天は採用した300人のうち100人が海外からの採用だ。ユニクロも今後、7割は海外人材を採用する。

 じり貧となる日本の内需だけに頼るのではなく、内需で鍛えたエッセンスを海外に出していく必要がある。衣料・雑貨の無印良品は中国など海外でデザインと高品質の商品が高い支持を受けている。ヤマト運輸は日本で培った流通サービスを上海やシンガポールで展開している。

 日本の農作物は競争力がある。農業をIT化で管理することで坪当たりの収益は上がる。三毛作ができるぐらいに管理して、もうかる仕組みをつくれる。

 異業種と組んで生産性を上げて海外に出す。企業が新規事業を興すことで雇用を増やしていける。

 高齢化社会の中、働く女性の環境を整えることが日本の未来を決める。女性の社会進出は家事や子育て支援などのサービスを伸ばし、GDPを数%押し上げる効果がある。

リーダーは嫌われ役
作家 山本一力氏

 リーダーは人に嫌われることを覚悟して、決断を下さなければならない。今の日本は嫌われたくない症候群がまん延している。後輩に厳しいことを言わない、叱らない、知らない顔をする。

 私が社会人になったころ、先輩方は後輩を本気で叱っていた。後輩に好かれようと考えていなかった。朝から言われたときはやってられないと思ったこともあったが、思い返すとあのとき言ってもらってよかったと思う。

 ありがたいと思うのは54歳になってから。19歳の時から長年たってからの感情だ。

 だが、今の時代は言う方も言われる方も短気。お互いが相手を拒むように言葉をぶつけ合うと言われた言葉が入ってこない。正しいと思っても相手に伝わらなければ単なる怒鳴り声にしかならない。

 年をとると頑固になる。俺が当たっている、正しいがどうしても前に出る。一歩引いた方がいいのか、どうすれば伝わるのかを考えるべきだ。

 リーダーは常に選ぶ側だ。物事を判断して結論を出さなければならない。決めなければ物事は進まないし、決めれば文句を言われる。違うという意見が出るし、しこりが残る可能性もある。だがそれは仕方ない。リーダーは人から恨まれることを体で受け止めてこそ職務が遂行できる。