野党側の追及と仲井真弘多知事の証言は、最後までかみあわなかった。埋め立て承認について「法律にのっとって判断した」とする知事と、政治的判断の疑いを追及する野党側のズレは埋まらず、疑問は深まるばかりだ。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設に伴う埋め立て承認の経緯を究明する県議会の調査特別委員会(百条委)は21日、仲井真知事の証人喚問を行った。

 「埋め立てによる環境への懸念が払拭(ふっしょく)できない」とした県環境生活部の意見について仲井真知事は「懸念をぬぐえないということはだめだということではない」と、承認判断の妥当性を主張した。しかし、懸念の指摘を把握しながら承認したことは、政治的判断があったからだという疑念を持たざるを得ない。

 知事は昨年末、安倍晋三首相と会談した。首相は2014年度の沖縄振興予算に概算要求を上回る3460億円を計上したことや、21年度まで毎年3千億円台の沖縄振興予算を確保するなどの振興策を示した。また、日米地位協定を補足する新たな政府間協定を策定し、環境条項を盛り込むなどの基地負担の軽減策を示した。

 何の担保もないにもかかわらず知事は「驚くべき立派な内容」と最大級の感謝の言葉を述べた。さらに「首相の言葉を胸に受け止め、これらを基礎に埋め立ての承認・不承認を決めたい」と答えている。百条委でも追及されたが、この発言は世間の常識から見れば、承認するということと同義語である。

    ■    ■

 知事は都内に入院していた昨年末、病院を抜け出してひそかに政府関係者と会っていた。百条委で12月22日に菅義偉官房長官と会談したことを初めて認めた。予算や振興策が中心で埋め立て承認に関する話はなかったと述べたが、本当なのだろうか。

 百条委での知事の証言には矛盾も目立った。

 昨年末、知事公室長に対し、埋め立て申請の対応について承認・不承認の両方を想定するよう指示したことを問われ「覚えていない。指示した記憶はない」と答えた。しかし、知事公室長は記者団に対し指示を受けたと話している。入院していた都内の病院に関係部長らを集め、指示を出したことについても「(内容を)はっきり覚えていない」と述べた。

 県は知事と担当部局とのやりとりを記録した「調整メモ」はないと主張している。その上、重大な政策決定を下した本人が覚えていないというなら、承認過程の検証はできない。県民に対する背信ではないか。

    ■    ■

 百条委で知事は、承認に至る事務方との調整なども核心部分になると「覚えていない」など、あいまいな証言を繰り返した。

 5年以内の普天間の運用停止の実現性について政府から担保をとっているか問われると「百条委の目的と関係ないと理解しているので控えたい」と答弁を避けた。

 説明責任を求める県民に対する真摯(しんし)さが欠けているというほかない。