地域の言葉(しまくとぅば)を残そうと、名護市や西原町では、市町村史の「言語編」を編さんしている。周辺市町村の言葉と比較して地域の特色を浮き上がらせたり、集落ごとで異なるしまくとぅばの分布地図を作製するなどの工夫を凝らす。編さんに携わった地域住民の中には集落の言葉で表現した詩集を自費出版した人もいる。しまくとぅば継承の機運が盛り上がる一方で、研究者は「記録は今後10年がヤマ」とし、行政主導の取り組みの拡大を期待する。(政経部・仲田佳史)

地域の言葉を編さんしている主な自治体

 名護市は2006年に発刊した。名護の言葉は沖縄島北部圏域でくくられるため、国頭村から旧石川市の一部を含む北部・離島13市町村を調査し、比較した。その結果、名護市は大きく分けて、名護岳を境に東海岸と西海岸で発音が違う単語があり、名護市周辺の市町村と同じ発音を持っていることが分かった。

 例えば「兄」は、名護市南部では金武町や伊平屋などと同じ「ヤクミー」、名護市羽地では今帰仁村と同じ「ミーミー」、名護市久志地区中北部は恩納村や本部町中部と同じ「アッピー」と発音されている。

 名護市教委の市史編さん係の大嶺真人さんは「70、80代は本来のアクセントやイントネーションを残す発音だが、50、60代には本島中南部のなまりがある」と指摘。間切意識が強く、交流が集落内に限られた時代から、他地域との交流が増えた結果とみる。次世代への継承には音声データの活用も必要になるとした。

 西原町は「言語編」を10年に発刊した。人間関係や身体、動物など17分野で5500の単語を採録、イラストや写真を交えて、分かりやすさを追求した。町内旧15集落の違いを比較するため言語地図も作製し、視覚的に理解できるよう工夫した。町立図書館内に設置するタッチパネル式パソコンで、西原の文化や歴史とともに「西原ことば」を紹介する。

 一方、策定中の市町村もある。14年度から調査を始める与那国町は「与那国島方言辞典」作成を目指す。町史編さん担当の米城恵さんによると、研究者の調査で文法は解析されているが、単語数が不足しているという。畑ごとに地名が付けられ、山の中でもまきを取りに行った場所に地名があるが、生活環境の変化で使われなくなっている。米城さんは「テレビや新聞で接触するのは日本語。与那国の言葉は絶えざる変化に遭遇しており、危機的状況だ」と訴える。50代後半の住民への聞き取りで5千以上の単語を収録する予定で、19年度の完成を目指す。

 読谷村は西原町の言語編を参考に、20年ごろの発刊を想定。すでに刊行された読谷村史「民俗編」や、字誌から単語を収集中で、不足している単語は地域の高齢者から聞き取りを進めている。発音表記は、過去に収録した明治時代生まれの住民の録音データを使う方針だ。村文化振興課の泉川良彦主幹は「しまくとぅばの指導者に参考資料として、活用してもらえれば」と話している。