近年われわれはさまざまな病気に対しさまざまな薬を服用あるいは点滴、注射によりその恩恵を受けています。これらの薬は、数々の厳しい治験・臨床試験を経て、科学的根拠(エビデンス)に基づいた治療薬としてわれわれの手元に届きます。

 ところで皆さまは治験や臨床試験という言葉をご存じでしょうか? 治験・臨床試験とは医薬品の製造販売にむけ、薬事法に基づく国の承認を得るために行う試験のことで、薬剤そのものの効果を評価することもさることながら、その薬の副作用や安全性を含め実臨床で実際「使う」ための総合的な評価を行います。

 沖縄県医師会では2011年5月より治験審査委員会が1カ月に1回開催されており、これまでに2型糖尿病を対象とした新薬、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)や統合失調症の薬剤の治験が審査されています。乳腺疾患においてもいよいよ新薬の治験が開始されます。現在われわれは沖縄県の乳がん死亡率減少に向けた取り組みを行っていますが、治験の導入により乳がん死亡率減少に貢献できる可能性があると期待しているところです。

 当然のことながら治験に参加するデメリットもあります。複数回の検査を余儀なくされたり、あるいは副作用が強く出てしまうこともまれではありますが想定されます。したがって治験を遂行するわれわれ医療機関には、質の高い検査や治療、データ管理や会計のシステムに至るまで非常に厳しいハードルが課せられます。最新で効果が期待される治療を行うためには厳格な診療体制は必須であり、またこのような質の高い医療をフィードバックできることは治療を受ける患者さんにとっても非常にメリットであると考えられます。

 全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)のガイドラインに「すべてのがん患者に対する最良の管理法は治験・臨床試験にあると考えている。治験・臨床試験への参加が特に勧められる」と記載されています。最新の薬剤は試験段階であるとはいえ、近未来の標準治療としてのその効果が期待される薬剤が数多くあります。がん治療において、少しでも治療の選択肢が増えること、しかもその薬剤の効果が期待できるものであれば、治療を受ける皆さまにとっても大きなメリットになるのではないでしょうか。沖縄県でも治験・臨床試験を推進するためのシステムをさらに構築していきたいと考えております。(玉城研太朗・那覇西クリニック)