「平和国家」として歩んできた日本の姿を国際社会に示す国是ともいうべき「武器輸出三原則」が見直され、骨抜きにされようとしている。

 安倍政権が従来の三原則の代わりに導入する新たな指針案の内容が明らかになった。従来の三原則が禁輸先として明示していた「共産圏」「国際紛争の当事国」の二つを削除する見通しという。

 昨年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」に三原則の見直しが明記されているが、国会論議がほとんどないまま、3月中の閣議決定を目指している。平和主義の大切な理念の一つがなし崩しにされ、日本が国際社会から勝ち得ていた信頼を揺るがしかねないことを強く危惧する。

 「国際紛争の当事国」の削除は、紛争当事国間で日本の武器・技術が使用されるということだ。国際紛争に日本が関与することを意味する。武器が第三国に流出し、紛争が拡大する懸念も消えない。

 新指針案は、国際的な平和や安全の維持を妨げることが明らかな場合は輸出しない-ことなど3本柱を挙げているが、厳密さに欠け、これで歯止めをかけることができるのか大いに疑問だ。

 三原則は佐藤栄作首相が1967年、(1)共産圏(2)国連決議で武器輸出が禁じられている国(3)国際紛争の当事国-への武器輸出を認めないことを打ち出した。さらに三木武夫首相が76年、全面的に慎む方針を示し、禁輸は拡大した。

 だが、83年に中曽根康弘首相が米国への武器技術供与を認めて以来、その都度、例外として禁輸の緩和が進んだ。民主党の野田政権でも大幅緩和をしたが、今回はこれまでとはレベルが全く違う。

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 政府の新指針案を後押ししているのが防衛産業界である。日本の平和主義の象徴の一つである武器輸出三原則の見直しに前のめりの安倍政権と経団連傘下の防衛産業が官民一体となっている構図だ。

 計60社でつくる経団連の防衛生産委員会が政府の新指針案に先立ち今月中旬、三原則を大幅に緩和すべきだとする提言を自民党に提出した。国産品の輸出を広く認めることや政府に武器輸出を専門とする部署を設置すること、大規模な国際共同開発は国が主導するよう求めている。

 安倍政権に呼応する動きだが、平和憲法に基づく三原則をないがしろにし、防衛ビジネスを優先するあまり、戦後、日本が国際社会の中で積み上げてきた平和国家としての地位を傷つけかねないことを認識しなければならない。

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 武器輸出三原則の見直しについて国民的合意は得られているのだろうか。

 共同通信社が今月実施した全国電話世論調査によると、三原則の緩和に反対する人は66・8%に上り、賛成の25・7%を大きく引き離している。日本が輸出した武器が国際紛争地で使用され、紛争に関与することへの懸念が如実に示されていると、安倍政権は受け止めるべきだ。

 三原則は平和国家、日本を体現するものである。歴代政権が営々として築いてきた大原則を、ビジネス優先で、捨て去ることは許されない。