「手紙が無理なら電話でもいい 金頼むの一言でもいい お前の笑顔を待ちわびる お袋に聞かせてやってくれ」。さだまさしさんの「案山子(かかし)」は離れて暮らす肉親への思いを映す

 ▼その愛情を逆手に取った詐欺がはびこる世は悲しい。同じ人から続けてお金をだまし取ることをおかわりと呼び、だまされる方が悪い、と言ってのける。NHKスペシャル取材班の『職業“振り込め詐欺”』は、格差社会が生んだ怪物の生態を暴いている

 ▼振り込まれた金を口座から引き出す出し子、金の運び屋、電話をかける実行犯、そして主犯格。連絡は一方通行で、出し子が逮捕されても主犯格には、捜査が及ばない

 ▼暴利をむさぼる「上」とその日の糧を得るために片棒をかつぐ「下」。犯罪組織の中には、天と地ほどの格差が存在していた

 ▼昨年の振り込め詐欺などの特殊詐欺の被害総額は約486億9千万円で過去最悪となった。でも県内では被害件数も被害額も減った。高齢者の被害が18件から3件となり、おれおれ詐欺は0件

 ▼各金融機関は窓口で異変を感じたら事情を聞いて、振り込まないよう説得する取り組みを重ねてきた。罪悪感のかけらもなく人生をもてあそぶ連中がいる一方で、お年寄りら利用者を守ろうと心を砕く職員のまなざしがあることに救われる思いがする。(具志堅学)