政府は、中長期的なエネルギー政策の指針となる新たなエネルギー基本計画案を決めた。原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原発再稼働を進める方針だ。

 政府は、与党との協議を経て3月中の閣議決定を目指している。だが政府案には、根強い脱原発の世論が反映されているとは言い難い。東京電力福島第1原発事故では、いまだに多くの人が避難生活を余儀なくされ、汚染水漏れが続いている。国民の不安を置き去りにした原発維持政策は、到底認められない。

 国会答弁などで原発再稼働に前向きな姿勢をにじませていた安倍晋三首相の意向が反映されたものだろう。しかし、自民党は2012年の衆院選で「原子力に依存しない社会の確立」を公約に掲げた。政府案は明らかに公約に違反している。党内からも公約との整合性に関して異論が出ているのである。

 政府は昨年12月、基本計画の素案をまとめた。しかし、東京都知事選で脱原発が注目されたことから、1月の閣議決定を見送った経緯がある。さらに当初案の「基盤となる重要なベース電源」との原発の位置付けに、与党内から原発色が強すぎると異論が出て、経済産業省が修正を進めていた。

 「重要なベースロード電源」と変更したことについて同省は「常時一定量を発電するベース電源の概念を分かりやすくした」と説明するが、これでは単なる言い換えではないか。茂木敏充経産相は会見で、当初案と「基本的に方向性が変わったとは認識していない」と述べている。

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 政府案では「原発依存を可能な限り低減する」としている。だが、低減への道筋や原発比率などは示されず、あいまいだ。むしろ、原子力規制委員会の規制基準に適合した原発について「再稼働を進める」とし、安定供給やコスト低減などの観点から「確保していく原発の規模を見極める」とするなど、原発維持に前のめりの内容だ。

 電力会社が再稼働に向け原子力規制委に審査を申請した原発は10原発17基に上る。だが、再稼働への地元や周辺住民の不安は大きい。

 四国電力が再稼働を目指す伊方原発(愛媛県)について共同通信などが今月、四国4県の住民に行った電話世論調査では、原発を「不安」「やや不安」とした人は計86・9%に達した。東北電力女川原発(宮城県)を再稼働せず廃炉にするよう求める住民らは、10万筆を超える署名を県に提出している。

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 現行のエネルギー基本計画は東日本大震災前の10年6月に策定された。原発について「原子力は供給安定性、環境適合性、経済効率性を同時に満たす基幹エネルギーである」と位置付けている。

 福島第1原発事故の現状に照らすと、これらはいずれも当てはまらないことが証明された。政府案には福島の原発事故の影響が考慮されているとはとても思えない。

 原発の過酷事故の教訓をくみ取らないままのエネルギー政策は、民意に背を向けるものだ。