石原伸晃環境相が、衆院予算委員会で耳を疑う見解を示した。政府が目指す沖縄本島北部(東村、大宜味村、国頭村)を含む「奄美・琉球」の世界自然遺産の登録に、名護市辺野古沿岸海域や大浦湾を追加する可能性を問われ、こう否定した。

 「ユネスコのルールにのっとって、守るべきものがいないところを、政治的な問題として後から加えることは環境省として考えていない」

 日本ユネスコ協会連盟によると、世界遺産の登録基準には「学術上または保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅の恐れのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する」との項目も含まれる。

 辺野古沿岸海域や大浦湾には、国の天然記念物ジュゴンが生息する。ジュゴンは、環境省が絶滅危険性の極めて高い「絶滅危惧種IA類」に指定している。国際自然保護連合(IUCN)は過去3回にわたって、ジュゴン保護を求める勧告を出している。

 辺野古海域のジュゴン保護の重要性は国際的にも広く認知されている。そうした中、ユネスコの基準に照らし、石原氏が「守るべきものがいない」と断言するのは疑問だ。

 石原氏は「政治問題とくっつけて、委員会でコメントするのは立場上控える」とも述べた。「政治問題」とは、辺野古沿岸海域が米軍普天間飛行場の移設先であることを指す。環境省には、むしろ政治情勢に流されず、純粋に学術的観点からジュゴン保護対策を図るよう要望したい。

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 普天間代替施設の建設に伴う辺野古海域の埋め立てをめぐっては、環境への深刻な負荷が指摘されている。県環境生活部は昨年11月、国の埋め立て承認申請に対し、申請書に示された環境保全措置では不明な点があり、「懸念が払拭(ふっしょく)できない」と問題視した。

 ジュゴンのほか、ウミガメやサンゴ、海草藻類に与える影響や、投入土砂に混入する恐れのある外来生物が及ぼす生態系への影響など具体的な課題を列挙している。

 日米の環境保護団体などが米国国家歴史保存法に基づき米国で起こした「沖縄ジュゴン訴訟」でサンフランシスコ連邦地裁は2008年、「ジュゴンは同法で保護されるべきで、辺野古への基地建設は同法違反」と判断。米国防総省に対し、当事者としてジュゴン保護に取り組むよう命じた。しかし、日米ともに保護対策に十分向き合っているとは言い難いのが実情だ。

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 オーストラリアでは、ジュゴンの生息する海が世界自然遺産に登録されている。

 ジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎事務局次長は「大浦湾も北限の生息地として十分な価値があるのに、政治で環境問題が押さえつけられている」と嘆いている。

 安倍政権は一丸となって辺野古沿岸部での普天間代替施設建設を推進する方針だ。反対行動を想定し、刑事特別法の適用も検討している。

 地元の民意を無視して建設推進に前のめりになり、環境や人権への配慮を欠くようなことがあってはならない。