仲井真弘多知事が安倍晋三首相に候補地として名乗りを上げたカジノを含む統合型リゾート(IR)は、超党派の衆参議員による法案の国会審議が見通される一方で、県内では常に賛否が分かれてきた経緯があり、全県民的な議論が熟したといえる状態ではない。

 仲井真県政は2007~08年度の「カジノ・エンターテインメント検討事業」で経済効果の試算や懸念事項を実施し、10~12年度は海外事例の調査や地域住民への説明会など「県民合意が前提」との公約を基に慎重に検討を進めてきた。

 だが、昨年12月の沖縄政策協議会では要請書にIRを盛り込み「候補地として頭に入れてほしい」と安倍首相に直訴した。こうした手法は知事の得意とするトップ交渉だが、安倍首相は「そう簡単にはいかない」との答えにとどめた。野党県議からも代表質問で「矛盾している」との指摘があるように、知事が導入に前のめりな印象はぬぐえない。

 実際に、県の事務方は「現時点で適否は決めていない」と説明する。さらに、沖政協の要請書は事務調整なしの知事からのトップダウンで作成された独断に近い要請だった。

 知事の一連の言動は、県議会で野党中立会派が百条委員会まで設置した普天間飛行場返還をめぐる名護市辺野古埋め立て承認問題と重なる。行政手続きとして法的に承認を判断したとする一方で、承認直前に事実上の条件ともいえるIRを含めた振興・基地負担軽減を要請したのは、承認を前提としていたのでは-との疑問も県内に残っている。

 IRで、合意形成と候補地決定の前後にこだわらない考えをにじませる知事の姿勢は、導入に向けたダブルスタンダードに映りかねない。(政経部・銘苅一哲)