県教育委員会に対する竹富町教委への是正要求指示といい、今回の法改正案といい、どうしても竹富町に特定の教科書を使わせたいという安倍政権の思惑が見える。

 八重山地区で異なる中学公民教科書が使われていることについて、政府は複数の市町村で構成する教科書の共同採択地区内で、教科書採択に係る手続きを明確化する教科書無償措置法改正案を国会に提出した。

 改正案は「採択地区協議会の協議の結果に基づき、同一の教科書を採択しなければならない」と明文化している。

 竹富町は、地方教育行政法(地教行法)で教科書の採択権限が各教委にあると規定していることを根拠として、自主採択している。

 これに対し文部科学省は、同じ地区内で教科書を統一するよう定めている教科書無償措置法に竹富町が違反していると主張、二つの法の矛盾が指摘されてきた。下村博文文科相は「共同採択のルールを明確化し、こうした問題が発生しないようにしたい」と述べ、2015年度の教科書採択から適用する方針だ。

 法の矛盾を改めるのに異論はない。しかし、八重山採択地区協議会が3年前に行った教科書選定手続きの経緯を振り返ると、竹富町への圧力としか思えない。

 11年8月の八重山地区協議会では、役員会を経ずに教科書調査委員を委嘱したり、調査員の推薦がなかったにもかかわらず、保守色の強い育鵬社版を選定した。竹富町教委はこれに反発し、東京書籍版を採択したのである。

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 文科省は昨年10月、県教育委員会に対し、竹富町の中学校が使う公民教科書を育鵬社版にするよう同町教委に指導を求める是正要求を出した。

 しかし、無償措置法に照らせば、石垣市と与那国町も違法状態にあるといえる。竹富町のみに是正を求めるのは、筋が通らないのは明らかだ。

 自民党は教育委員会制度改革案に、教科書採択などで文科相が教委に是正要求しやすくする地教行法改正を盛り込んだ。地教行法は、是正要求について「児童や生徒の教育を受ける権利が侵害されているのが明らかな場合」と限定している。竹富町への是正要求が地教行法ではなく、地方自治法に基づいているのはそのためだ。

 自民、公明両党の教育委員会改革に関する作業チームは、公明党の慎重姿勢もあり、教科書問題で是正要求を出す要件緩和は見送る方向だが、教育への国の過剰な介入の動きであり看過できない。

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 文科省が、教科書無償措置法改正案作成に向けて諮問した中央教育審議会の分科会では、共同採択制度について「市町村の教科書に対するニーズの多様化などを踏まえ、制度のあり方についても検討すべきだ」「市町村教委の希望に応じて選択できるよう、単独採択制度との折衷的な方策も考えられる」との意見も出ている。

 国はむしろ、これらの意見を改正法に反映させ、八重山地区の共同採択を見直し、竹富町を教科書無償配布の対象にすべきではないか。