もっと続けたい楽しい旅でも、自宅に帰るとなぜかホッとする。部屋の掃除は至らなくても、わが家とはどこよりも安らぐよりどころだ

▼東日本大震災で被災した高齢者にとって、仮設住宅は暮らしに慣れても心のわが家にはなり得ないのだろう。岩手、宮城、福島3県の沿岸部など42市町村で、要介護認定を受けた高齢者が激増している

▼震災前の2010年3月末に比べると、わずか4年で20%超の計2万人も増えた。とりわけ福島第1原発が立地する福島県大熊町は62%、近隣の双葉町や浪江町、飯館村も50%を超える増加率というからより深刻だ

▼主な原因は、狭い仮設住宅での生活や避難先での引きこもり。震災後、家族はバラバラになり、日常的だったであろう手入れする自宅庭を失った。津波に漬かった農地の復旧は遅々としている

▼外出や体を動かす機会が減って心と体の機能が落ち、高齢者の場合は歩行困難や寝たきりにもなる生活不活発病を発症する要素が、避難生活には詰まっている。それなのに、約10万人が暮らす仮設住宅が解消される見通しは立たない

▼やっとなじんだ仮設から、別の仮設に移る高齢者もいる。ホッと一息ついて普通に暮らせるわが家を、一日も早く手にしてほしい。ことしもまた、忘れてはならない3月11日がやってくる。(与那嶺一枝)