中国の軍拡路線が際立っている。とどまるところを知らない国防費の伸びは、意図も中身も透明性を欠いているだけに、周辺国にとっては大きな脅威である。

 中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)が5日に開幕、李克強首相が政府活動報告を行った。2014年度の国防予算案は、前年度実績比12・2%増の8082億3千万元(約13兆4400億円)。4年連続で2桁の伸び率となった。中国の国防費は、10年度を除き、約四半世紀にわたって2桁の割合で伸びていることになる。

 経済成長率の目標(7・5%)を上回る国防費の伸びは、何を目的にしているのか。

 中国は、遠方の敵を防衛線の内側に入れさせず、防衛線を突破された場合でも敵の自由な行動を許さないという「接近阻止・領域拒否」戦略を進めている。

 李首相は全人代で、東シナ海や南シナ海での領有権争いを念頭に、「領海、領空防衛の管理を強化する」とも語り、海洋大国への強い意志を示した。

 こうした動きは、戦後、米国がアジアに築いた覇権を米国からもぎ取り、東シナ海、南シナ海の領有権問題では一歩も譲らないという意思表示、だと受け止められている。

 力の外交を押し進める一方で、内政面では、大気汚染や格差、汚職、暴動など、困難な問題が山積している。このままでは中国イメージは悪くなるばかりだ。

 「威圧し、従わせる大国」ではなく、「国際社会と協調し、頼れる大国」になることを強く求めたい。

    ■    ■

 中国の海洋進出に対して政府は昨年末、中国への対抗意識を前面に打ち出した国家安全保障戦略と新防衛大綱、中期防衛力整備計画の3点セットを策定した。

 東アジア重視のリバランス(再均衡)政策を打ち出している米国防総省は4日、「4年ごとの国防戦略見直し」(QDR)を発表した。

 中国の軍備増強に対抗するため20年までに海軍艦船の6割をアジア太平洋地域に配置する計画だ。

 中国の軍備増強に日米が危機感をあらわにし、日米の軍備増強に中国が対抗する-東アジアは、地域覇権をめぐって、典型的な「負の連鎖」に陥ってしまった。

 自民党の石破茂幹事長は6日、国会内で講演し、「将来的にはアジア版の北大西洋条約機構(NATO)が必要だ」と語った。中国を除外し、中国を封じ込めるという考えなのだろうか。危険な発想である。

    ■    ■

 軍事力に頼る武張った考えが東アジアを覆い尽くし、「新冷戦」ともいえる状況がこの地域に生まれつつある。日中両国の「嫌中感情」「嫌日感情」はかつてないほど高まっている。

 東アジアの軍拡競争は、沖縄の基地負担を重くする方向にしか作用しない。日中が軍拡競争に走るのは、経済面のリスク要因を増やすことになり、国際社会にとっても大きなマイナスだ。日米中3カ国は、対話を通した緊張緩和に本腰を入れるべきである。