東京電力福島第1原発事故から3年。住民の避難生活は長期化し、廃炉に向けた作業は始まったばかりだ。汚染水漏れなどのトラブルも相次ぎ、事故収束の見通しは立っていない。「安全神話」に基づいた国の原子力政策の誤りは、多大な「人災」をもたらした。今、あらためて事故の教訓を胸に刻みつけるべきであろう。

 第1原発に近く年間の被ばく放射線量が50ミリシーベルト超の「帰還困難区域」など、国による避難指示区域は維持されたままだ。原発事故に伴う福島県の避難者数は、13万5906人(2月26日現在、沖縄には670人)に上る。第1原発が立地する双葉町や大熊町など7町村では、いまだに全住民の避難が続いている。

 ふるさとに帰りたくても帰れない人、新たな場所での生活再建に踏み切った人、放射線への不安から子どもを連れて自主避難している人。「当たり前の生活」が、突然断ち切られた福島の人々の苦悩は3年たった今もなお、続いているのである。

 全村避難が続く飯舘村では、再生への模索を続ける。だが、村などが昨年11月に世帯主を対象に実施した調査では村に「戻りたい」は21・3%で「戻らない」の30・8%を下回った。

 県外に子どもを連れて自主避難した家族の中には、避難先に残りたいと希望する子どもと、帰還を決めた親とが離ればなれの暮らしを余儀なくされるケースもある。長期化する避難生活によって、帰還に対する地域や世代間にギャップが生じているのだ。

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 仮設住宅などでの長引く避難生活は、高齢者の健康をむしばんでいる。

 避難生活で体調が悪化したり、自殺に追い込まれたりする「震災関連死」。福島県の死者は、1656人(2月19日現在)で、地震や津波による「直接死」の1607人を上回った。

 復興庁によると、昨年9月現在で震災関連死とされた人の約9割が66歳以上だった。原発事故で避難生活が長期化し、帰還など将来の見通しが立たずにストレスが増したことなどが背景にあるとみられている。

 政府は昨年末、避難者の全員帰還の原則を断念し、移住支援策を盛り込んだ復興指針を決めた。しかし、戻りたくても戻れない人の「痛み」に国はどう向き合うのか。

 「復興のため国が前面に出る」と繰り返す安倍晋三首相は、むしろ原発再稼働に積極的だ。これで福島の教訓を生かしていると言えるのか。

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 先月政府が決定した新たなエネルギー基本計画案では、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、原発再稼働を進める方針を維持した。政府案では、原子力規制委員会の審査を通過した原発を「規制委の判断を尊重し再稼働を進める」との方針を明確にしたのである。

 日本世論調査会が今月行った全国世論調査では、原発を再稼働させる安倍政権の方針に過半数が反対だった。

 3年前の過酷事故を忘れたかのようなエネルギー政策であってはならない。