スポーツ選手や俳優などがめざましい業績を挙げて一躍、時の人になると横顔を知りたくなるのが人情だ

▼生い立ちや努力の過程、人柄を知るとより好感度が増す。青少年なら憧れが強まり、目標にすることもあるだろう。しかし、人となりが過剰に出過ぎると、途端に物語性を帯び、真実が見えなくなる

▼被爆2世で耳の聞こえない作曲家という触れ込みで人気のあった佐村河内守さんは、会見で自らの物語を完全に打ち砕いた。釈明にいちるの望みを抱いたかもしれないファンや聴覚障がい者を二重に傷つけた

▼生物学の常識を根底から覆す大発見として世界中から注目された万能細胞「STAP細胞」が、発表からわずか1カ月余で真偽が問われる瀬戸際に立たされている

▼論文の根幹に疑義が向けられている研究リーダー小保方晴子さんは今どきのヘアスタイルと愛らしい笑顔で彗星(すいせい)のごとく現れ、大発見とのギャップが好意的に受け止められた。研究と無関係なかっぽう着や中学の作文で書いた本も話題に上り横顔報道が過熱した

▼女性研究者の物語のベクトルが今度は逆に向き、研究生命をも危うくしかねないことを危惧する。自戒を込めつつ、メディアは冷静な目で論文の調査を注視したい。たとえ検証に時間がかかっても真実は一つしかないのだから。(与那嶺一枝)