政府は、武器や関連技術の輸出を制限してきた武器輸出三原則を全面的に見直す新たな原則案を与党に提示した。

 新原則の柱は、(1)紛争当事国や国連決議違反など、国際的な平和と安全の維持を妨げることが明らかな場合は輸出しない(2)輸出を認める場合を限定し、厳格に審査する(3)目的外使用や第三国への移転について適正管理が確保される場合に限って輸出する-という内容だ。

 一定の要件を満たせば輸出を認めるもので、従来の「原則禁止」から大きく踏み出す可能性がある。公明党は「紛争当事国」の定義の明確化や輸出を決める手続きの透明化を求めた。なし崩し的な輸出拡大にならないよう歯止め策を慎重に検討すべきだ。

 が、国政の動きは慌ただしい。政府が目指す3月の閣議決定に向け、月内に与党の了承が得られる公算が大きくなっている。

 三原則見直しは、平和主義を掲げる戦後日本の国是の転換ともいえる。こうした重大な課題を、与党内の論理で、一刻を争うように押し通そうとするのはなぜか。

 4月には集団的自衛権の行使容認に関する有識者懇談会の報告書がまとまり、自民・公明間の協議が本格化する。

 集団的自衛権の議論に埋もれるのを避けるため、武器輸出に向けた作業を急がなければならない、との焦りや思惑が政府内にあるという。

 共同通信社が2月に実施した全国世論調査では、武器輸出三原則の緩和に反対するとの回答は7割近くに上った。民意は置き去りのままだ。

    ■    ■

 戦後日本の原点は、二度と戦争をしない、という誓いにある。国内外に多大な犠牲を強いたことへの深い反省とともに、平和主義は戦後日本の繁栄を支える土台になってきたはずだ。

 「国際貢献」や「積極的平和主義」を掲げ、武器輸出緩和や集団的自衛権の行使容認を進める安倍晋三首相の姿勢は、周辺国にどう映っているだろうか。

 一例を挙げてみたい。

 安倍政権は2013年12月、武器輸出三原則の例外として、南スーダンで国連平和維持活動(PKO)を展開する韓国部隊に小銃用の銃弾1万発を提供した。首相は「万が一、断ったら国際社会から批判される」と正当性を主張した。ところがその後、韓国内で安倍政権が銃弾提供を「積極的平和主義」の推進に「政治利用している」との批判が噴出。結局、韓国軍は翌月、国連を通じ日本に銃弾を返却した。

    ■    ■

 安倍首相の歴史観や安全保障政策の行方に、かつて日本から侵略を受けた周辺国は警戒を強めているのが実情だ。

 政府、自民党が新原則を急ぐ背景には、防衛産業界の要請という側面もある。自国の経済や政治的利益を優先する思惑は、他国に筒抜けであることも認識すべきだろう。

 自民、公明両党は新原則の名称に「武器」を用いず「防衛装備移転三原則」と名付ける方針で一致した。「ソフトな言葉」(防衛省幹部)で戦闘イメージをオブラートに包んだという。誰の目から何を包み隠そうとしているのか。