安倍晋三首相の肝いりで要職に抜擢(ばってき)された人たちの物議を醸す言動が止まらない。

 NHK会長らの問題発言がくすぶる中、今度は小松一郎内閣法制局長官である。

 内閣法制局は政府の憲法解釈を事実上担い、「憲法の番人」と呼ばれる。小松氏は外務省出身で、これまで歴代内閣が認めてこなかった集団的自衛権の行使容認に道を開くため、安倍首相が「禁じ手」の手法で法制局以外から異例の形で長官に起用した。

 その小松氏の議場内外での言動に、内閣法制局長官としての適格性に疑問が出ている。国会答弁をめぐって「場外乱闘」をしたり、職責ののりを超えたりしているからだ。

 例えばこんな振る舞いである。今月4日の参院予算委員会で、共産党議員から「憲法の番人なのに、政権の番犬みたいなことをしないで」と注文をつけられた。

 これに対し5日、関係のない社民党議員へ答弁する中で「公務員にも人権がある」などと反論した。

 7日の予算委終了後には国会の廊下で別の共産党議員に「番犬の表現は不適切だった」「共産党に直接抗議してほしかった」と言われ、衆人環視の場で口論となった。

 問題はこれで終わらない。

 共産党議員の事務所に謝罪に行きながら、「法制局長官を辞任し、病気療養に専念すべきだ」と諭されたことに対し、「そういうことはいうべきではない」と「逆ギレ」。再び口論となり、謝罪どころではなくなった。野党は罷免を要求し、自民党からも厳しい見方が出ている。

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 小松氏は今月11日の参院予算委員会では、集団的自衛権の行使容認の理念を盛り込む「国家安全保障基本法案」について、「首相は、自民党が野党時代に決定した基本法を提出する考えはないと思う」と答弁した。これには自民党からも反発が相次いだ。法案の是非は別にして「法案提出権があるわけではない」(脇雅史参院幹事長)からだ。

 小松氏は、解釈改憲に前のめりの「安倍首相の方針に従ってやるべきことをやる」と言ってはばからない。

 「憲法の番人」ではなく「首相の代理人」との声が上がるゆえんだ。小松氏は内々に憲法解釈の変更を検討していることを認めている。内閣法制局が変質しているのだ。

 集団的自衛権について内閣法制局は「国際法上保有しているが、憲法上行使は許されない」との見解を示し、歴代内閣が踏襲してきた。これを一内閣の判断で、憲法改正の手続きを経ることなく変更するのはとても認められない。

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 籾井勝人NHK会長は就任会見で「従軍慰安婦」は「どこの国にもあった」と発言、百田尚樹経営委員は東京都知事選の応援演説で他候補を「人間のくず」と中傷し、「南京大虐殺はなかった」などと発言した。安倍首相の「お友達人事」の当事者らがなぜ問題となる言動をするのか。

 首相の信条に近いことを代弁しているか、首相の信条に近い人を登用した結果と考えるしかない。安倍首相は擁護するばかりだ。だが、首相の任命責任は免れない。