もう20年近く前のことになる。横浜市内のカラオケパブに張られた「沖縄の方お断り」の張り紙が波紋を呼んだ。県出身者が度々酔ってけんかをしたためで、店主の言い分は「店を守るためで差別ではない」

 ▼この出来事は東京近郊に住む県出身者を深く傷つけたが、怒りを爆発させ「許せない」と行動を起こしたのは、沖縄から南米に移民し、当時は逆に日本へ出稼ぎに来ていた日系人の子どもたちだった

 ▼中学生4人が店を訪ね、沖縄に対する思いをぶつけた。そこで初めて差別に気付いたという店主は、その場で張り紙をはがした。鶴見区内の中学校で日本語を教える教諭から後日談として聞いた

 ▼日本で「外国人」と呼ばれることの多い彼らは、ルーツである沖縄に強い誇りを持っていた。少数者としての痛みを知るからこそ、排外主義的な対応が許せなかったのだと思う

 ▼サッカーのJ1浦和のサポーターが「日本人以外お断り」の意味を持つ横断幕を掲げた問題で、Jリーグは過去に例のない無観客試合の厳罰を科した。掲示者の意図は関係なく行為そのものが差別的だ、とする重い処分である

 ▼競技場だけではない。ゆがんだナショナリズムが、社会のあちこちで頭をもたげ始めている。暗くよどんだ空気の広がりに、かつての中学生の勇気を思い起こした。(森田美奈子)