近年、さまざまな病気でオーダーメード(個別化)治療という言葉が聞かれるようになりました。同じ病気と思われてきた疾患の組織所見や遺伝子的特徴をもとに、場合分けをして、特性に合わせて、治療を選んでいくことです。

 私の専門分野は呼吸器疾患なので、その中でも肺がんについて述べたいと思います。

 肺がんの治療には主に(1)手術(2)抗癌剤投与(3)放射線治療があります。可能であれば手術を中心に治療を考えますが、病気の進行や高齢のため、または基礎疾患のために手術ができない場合は抗がん剤や放射線照射を中心とした治療を行います。

 この後は、手術が適応とならない肺がんに対する抗がん剤治療について述べます。

 私が医師になりたての20年前は、肺がんの治療と言えば治療期間のほとんどが入院となり、副作用も強く、つらい治療でした。その上、抗がん剤治療は使用しない時に比較し、余命を延長する効果は少ないものでした。そのため世論の中には肺がんの抗がん剤治療に否定的な意見もありました。それでも、その後の絶え間ない肺がん治療の進歩で、肺がんの種類によっては進行期のがんでも無治療の場合と比較し、年単位で余命を延長することが可能となってきました。

 肺がんの治療方法に影響する場合分けは、小細胞肺がん、非扁平上皮がん、扁平上皮がんの組織学的分類。非扁平上皮がんではがん細胞の遺伝子変異の有無などによってさらに場合分けをします。これらの情報と患者さんの全身状態、抗がん剤が影響する主要器官の疾患(腎障害や間質性肺炎など)の有無を合わせて検討し、治療薬の種類や量、投与方法などを決定します(オーダーメード)。最近では維持療法などの進歩で、治療の選択肢が広がっています。

 現在は抗がん剤治療に伴う副作用への対応策も進歩し、通常の日常生活を送りながら通院治療を継続することが可能となっています。

 私たち肺がん診療に携わる者は患者さんと共に話し合い、十分な説明後に納得を得た上で、少しでも良い治療(個々の価値観によっても異なります)ができるよう努めていきたいと考えています。

 もちろん、治療の選択権(抗がん剤を使用しない選択も含めて)は患者さん自身にあります。ゆっくりではありますが確実に進歩している肺がん治療のことをどうか私たち専門医に十分たずね、多くの情報を得た上で、納得のいく治療を選択してください。(伊志嶺朝彦・中頭病院)