北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさん=失跡当時(13)=の娘キム・ウンギョン(ヘギョン)さん(26)に、めぐみさんの両親が初めて面会した。滋さん(81)、早紀江さん(78)夫妻の孫にあたる。

 面会は「第三国」のモンゴル・ウランバートルで今月10~14日に行われ、日朝政府関係者が同席する中でウンギョンさん、その夫、娘とみられる人物と過ごしたという。

 拉致問題をめぐる日朝政府間協議は2012年11月以来、途切れている。北朝鮮は国際的合意を裏切り続けており、過剰な期待は禁物だが、何か変化が現れたのだろうか。

 19、20の両日には中国・瀋陽で日朝赤十字会談が開かれ、両国外務省担当者による非公式協議が行われることになっている。「解決済み」とする北朝鮮との隔たりが大きい中で、事態がどう展開するか予断は許さないが、局長級の政府間協議の再開で合意する可能性が出ている。

 横田さん夫妻の心情は察するにあまりある。夫妻は面会を「奇跡的」と語り、早紀江さんはウンギョンさんを「めぐみちゃんの若いころによく似ていた」と印象を紹介した。めぐみさんの安否は「仮に知っていたとしても話せないと思う」(滋さん)、「何も聞かなかった。元気でいると信じている」(早紀江さん)と、あえて交わさなかった。

 めぐみさんの拉致から36年余り。孫の存在は2002年に明らかになっており、横田さん夫妻は面会を希望する一方で「拉致問題の幕引きに利用される」ことを懸念する拉致被害者家族会の間で、12年間も苦悩を深めた。

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 北朝鮮の人権問題をめぐっては、国連調査委員会が先月、最終報告書を公表した。

 拉致問題については「国家によるこれほど大規模な外国人拉致は他に例を見ない」と口を極めて糾弾している。

 02年の小泉純一郎首相との会談で、当時の金正日総書記は拉致を認めて謝罪したが、「特殊機関の一部の妄動、英雄主義の結果と考える」と自身の関与を否定していた。だが、報告書は「(金日成主席や金正日総書記といった)最高指導者のレベルで承認していた」と、国家ぐるみの犯罪である、と指摘した。

 調査委は昨年3月、日本、欧州連合(EU)の提案で設置され、横田さん夫妻や、多くの脱北者らから聞き取りをした。北朝鮮の犯罪を裁くため国連安保理に国際刑事裁判所へ付託することや国連特別法廷の設置、拉致被害者が存命であれば出身国へ帰還させることなどを勧告している。

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 北朝鮮との協議は、前進したかと思うと、後退するといったことの繰り返しだ。

 安倍晋三首相は「私の内閣で全面解決に向けて全力を尽くす」と所信表明演説でも述べているが、領有権や歴史認識問題で冷え込んだ中韓との関係が影を落としている。

 中国は国連安保理で拒否権を持つ常任理事国である。先の報告書で言及された国際刑事裁判所へ付託することも可能性は低い。拉致問題解決には中韓の協力が欠かせない。安倍首相は中韓との関係改善を進めなければならない。