南寄りのぬくい風が都内で吹き、「春一番」と発表された。次は桜の開花に関心が向いている。三寒四温を繰り返しながら本格的な春到来が待たれる中、先日、黄色や紫色のクロッカスを見た

▼日差しを浴びて気温が高くなると咲く春の代表花。曇りの日や気温が低くなる夜には花を閉じるという特性が面白い

▼この花が咲き始めたころ、春の賃金交渉が決着した。自動車、電気、鉄鋼など大手製造業が続々と、基本給を底上げするベースアップ(ベア)を実施する

▼アベノミクスの風にさらされてというか、甘利明経済再生担当相が「何も対応しないなら、省から何らかの対応がある」と、露骨な賃上げ要請もあった。「安倍のベア」「官製春闘」とも揶揄(やゆ)されるおかしさはごもっともだ

▼賃金上昇、経済の好循環への期待はあるか。サラリーマンの社交場、新橋かいわいに弾む気分を探すにはまだ早いだろう。むしろ、4月の消費増税を見据えた家計防衛の方が、庶民の心を解かない要因として作用するのではなかろうか

▼ベアはもっぱら大手に限られ、働く人の7割が勤める中小企業、4割にのぼる非正規社員にも及ぶかどうか。沖縄への効果波及はさらに先だろう。増税後の来春。一人一人の暮らしのクロッカスは花を開いているだろうか。(宮城栄作)