多様化する保育ニーズに制度が追い付かない中で、幼い命が犠牲になる痛ましい事件が起きた。

 埼玉県内のマンションの一室で、ベビーシッターに預けられていた2歳男児が遺体で見つかった。横浜市に住む母親が、インターネットのシッター仲介サイトを通じて預けたという。死体遺棄の疑いで26歳の男が逮捕された。

 窒息死の疑いがあるというが、母親から託された後、男児に何があったのかは不明だ。

 ネットで見つけた、素性や保育経験の不明なシッターに、わが子を預ける危うさを指摘するのは、たやすい。だが、不安を感じつつも頼らざるを得ない親たちの切実な事情も受け止め、子どもの安全を確保する措置を急ぐべきだ。

 今回、母親が利用したような仲介サイトは、子どもを預けたい人と、シッターを引き受けたい人がそれぞれサイトに登録する仕組みとなっている。互いにメールなどで日時や料金を交渉し、まとまれば子どもを預け、料金を直接支払う。シッターになる人は住所、名前、連絡先を知らせるが、身分証明書の提示は必要ない。

 容疑者の男は複数の名前を使っていた。男児の母親は、以前も男にシッターを依頼したことがあり、このとき子どもがあざをつくって帰宅したため、男を警戒していた。しかし、今回は男が偽名を使っていたため気付かなかったという。

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 こうした仲介サイトは近年、広がりをみせている。シッターの派遣会社を通すよりも安価で利用できることや、当事者同士で直接交渉できるため託児が急に必要になった際に利用しやすいのがその理由だ。

 ただ、ベビーシッターは、国家資格の保育士と異なり公的な認定制度がない。利用者の自宅以外で預かる場合は認可外保育施設の形態に近いものの、5人以下を預かる場合には県などへの届け出は必要ない。つまり、行政の目が届いておらず、実態が見えない。

 事件を受け、厚生労働省は実態把握の意向を示し、ベビーシッターを利用する際の留意点をまとめ公表した。

 事前に必ずシッターと面会して信頼できるか確認することや、預けている間も電話やメールで子どもの様子を確認するよう呼び掛けている。いずれも子どもの安全を考えた際に必要な事項だ。利用者には徹底を求めたい。

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 就労の形態が多様化し、夜間や土日に働く親が増えた。仕事や用事が急に入るなどして一時的な託児が必要になっても、身近に頼れる人がいない。このような場合の保育ニーズに十分応えられていない現状が、今回の事件の背景にある。

 厚労省は、子育て支援充実のため、2015年度からベビーシッターを「居宅訪問型保育」として活用する方針だ。新たな制度に向け、シッターの質を保証する仕組みを早急に整えてもらいたい。まずは、子どもの命を預かる保育の重要性を、社会全体でとらえ直すことが必要だ。