ストーカー被害に歯止めがかからない。全国の警察が昨年1年間に把握した被害は2万1089件、前年比5・9%の増加で2年連続で過去最多を更新した。2000年のストーカー規制法施行以来、初めて2万件を超えた。

 規制法違反や脅迫、住居侵入などで摘発に至ったのは1889件に上り、これも過去最多である。殺人2件・未遂13件は、前年より5倍も増えている。ストーカー行為が凶悪事件に発展することを示しており、深刻な事態だ。

 東京都三鷹市で昨年10月、直前に警察に相談していた女子高校生が元交際相手に殺害された痛ましい事件は、警察に切迫感が乏しく、対応に重大な反省を迫るものだった。

 警察庁の米田壮長官が直後の全国警察本部長会議で危険性が高いと判断した加害者には、逮捕に向けた迅速な行動を取るべきだ、と指示した。警察は差し迫った場合には警告を経ずに逮捕する積極方針をとり、昨年11~12月の逮捕件数が前年同期と比べ20・6%増えたのはこのためだ。

 被害者やその家族に生命の危険が及ぶ可能性が高い緊急のケースには警察の積極姿勢は効力を発揮するに違いない。ただ、そのような対策には限界があると言わざるを得ない。逮捕され、判決後にも殺人などの重大事件が引き起こされているからだ。

 なぜ、ストーカー行為が繰り返されるのか。中・長期的な視点からとらえることも必要だ。加害者に対し、カウンセリングなど医療的な治療を施すべきだとの考えが専門家や被害者の家族から出ていることに注目したい。

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 神奈川県で12年11月に起きた逗子ストーカー事件。女性は交際していた男と別れ、別の男性と結婚したが、男が「殺す」などと脅すメールを送ってきたため、女性は警察に相談した。

 男は脅迫容疑で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けたが、その後も女性に大量のいやがらせメールを送りつけるようになった。女性は警察に相談したが、自宅で刺殺され、男は自殺した。

 この事件では警察が女性の結婚後の姓と住所を読み上げるなどの不手際や、女性の住所の割り出しを男が探偵業者に依頼するなどさまざまな問題点が浮き彫りになった。

 昨年7月施行された改正ストーカー規制法に、つきまとい行為に新たにメールの連続送信が加えられるきっかけになった事件でもある。

 被害者の女性の兄は、ストーカー行為を止めるには、加害者の精神的治療が不可欠と訴えている。

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 加害者を「ストーカー病」の患者と呼び、病気ととらえた上で、治療に取り組んでいる精神科医もいる。

 警察庁は新年度から警告を受けた加害者に精神科医の診察を受けるよう促す試みを始める。強制できないなどの課題はあるが、効果が認められれば、ストーカー行為に対する医療面からの新たなアプローチになるかもしれない。

 治療効果のいかんによっては、法務省や厚生労働省、NPOなど関係機関との幅広い連携が欠かせない。