八重山地区の中学校公民教科書の採択問題で、竹富町教育委員会は24日、定例会を開き、文部科学省の是正要求に応じない方針を確認した。

 竹富町教委の毅然(きぜん)として揺るぎのない姿勢は、決して間違ったことをやってはいない、という強い確信に支えられている。

 「みんなすくすくと、楽しく、明るく学校活動をやっているのに、どうして混乱を招くようなことをするのか。ほんとに不思議でしょうがない」。慶田盛安三教育長が指摘するように、学校現場では何の問題も起きていない。

 採択問題がここまでもつれ、長引いてきたのは、本をただせば教科書無償措置法と地方教育行政法という二つの関連法の矛盾を放置し、広域採択制度の不明確な点を是正せずにほったらかしてきたからである。

 竹富町教委だけをターゲットにして現場に介入するのは、著しく公正さに欠ける。是正を求めるなら、八重山採択地区協議会の3市町教委すべてに是正要求を出すべきである。

 教科書無償措置法は、同じ採択地区内では協議をして同一の教科書を採択しなければならないと定めている。文科省は、協議会が答申した育鵬社版を使わないのは「教科書無償措置法に違反している」と主張するが、あまりにも一面的である。

 同一教科書の採択は、協議会での意見一致が前提でなければならないはずだ。意見が一致せず協議が不調に終わった事案は、3市町が等しく責任を負うべきである。

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 竹富町の島々は、それぞれが豊かな個性を持ち、どこも息をのむほどに美しい。九つの有人島に現在、七つの小中学校と四つの小学校、二つの中学校がある。

 島の中学3年生33人が卒業前まで使ってきた公民教科書は、同町教育委員会が独自に使用を決めた東京書籍版である。

 保守色の濃厚な育鵬社版と違って、平和志向、国際協調の理念が感じられ、基地問題もちゃんと記述されている、との判断からだ。

 地方教育行政法は、市町村教育委員会に採択権があることを認めており、その点でも東京書籍版使用は「違法ではない」と竹富町教委は主張する。

 このような複雑ないきさつをもつ事案に対して、全国でも初めて国が直接介入し、一教委に対して教科書を変更するよう是正を求めたのである。地域の多様性や学校現場の自主性を無視した、バランスを欠く行為だというしかない。

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 下村博文文科相は以前から、保守色の濃厚な育鵬社版の教科書を高く評価していた。今回の採択問題は、採択地区協議会の玉津博克会長(石垣市教育長)が自民党文教族の一部と連絡を取りつつ、「指南」を受けながら、進めてきたものである。

 竹富町教委は、来年度も東京書籍版を使うことを確認している(対象46人)。政府は、その事実を認めた上で、現場が平穏な環境を維持できるよう配慮すべきだ。