ロシアと欧米は冷戦後、最大の危機に直面している。

 ロシアがウクライナ南部のクリミア自治共和国の編入を強行したことに対し、日米欧とカナダの先進7カ国(G7)はオランダ・ハーグで緊急首脳会議を開いた。主要国(G8)会合からロシアを排除し、参加を当面の間、停止することを盛り込んだ「ハーグ宣言」を採択した。

 冬季五輪・パラリンピックが開かれたばかりのロシア南部ソチで、6月に開催を予定していたG8首脳会議をボイコットし、ベルギー・ブリュッセルで、代わりのG7首脳会議を開くことを決めた。

 ロシアのラブロフ外相は「われわれはG8にしがみついたりしない。全ての問題は今やG20で話し合われている」と一歩も引かない考えを示している。国際秩序を破壊するような一方的な領土拡張を強行したロシアが強硬姿勢を改めない限り、米欧との対立は先鋭化するばかりだ。

 G7緊急首脳会議はオバマ米大統領が呼び掛けた。冷戦後にロシアをG8に参加させ、民主化を促してきたG7だが、ハーグ宣言でG8の枠組みが事実上崩壊した。

 米欧は、ロシアがクリミアを編入する過程で段階的に制裁を強めてきた。だが、プーチン大統領は軟化せず、大国として国際秩序を揺るがせている反省がみられない。

 ハーグ宣言でも、ロシアが現状をエスカレートさせる場合にはさらなる制裁の強化を組み入れているが、これだけでプーチン大統領にクリミア編入を撤回させることができるかどうか、極めて不透明であると言わざるを得ない。

    ■    ■

 ロシア軍はクリミアにあるウクライナ軍施設や艦船の大半をすでに制圧している。一方で、ウクライナ政府はクリミアから全ての軍隊を撤退させる方針を決めた。クリミアでロシア・ルーブルが公式通貨となり、ロシア化が既成事実として急速に進んでいる。

 クリミアでは今月中旬、住民投票が行われ、ロシアへの編入を承認した。これを受け、ロシアのプーチン大統領がクリミア編入を宣言した。

 国際法は、強制や力によって他国の一部または全部の領土を取得することを禁じている。ハーグ宣言が指摘するように明らかに違法である。

 G7緊急首脳会議で安倍晋三首相は「力を背景とする現状変更を許してはならない」と訴えた。ロシアとは北方領土問題をめぐって良好な関係を築きつつあっただけに、日本が難しい立場に置かれているのは事実だが、軍事力を背景にした領土拡張を認めるわけにはいかない。

    ■    ■

 ウクライナ南東部には、ロシア系の住民が多い地域がある。ロシアが軍事介入して「クリミア化」するのではないかとの懸念が消えない。

 ハーグ宣言では、「外交解決の余地は残されている」と言及している。ロシアと欧米の対立はまだ決定的な決裂にまでは至っていない。

 国際社会が緊張感を高め、不安定化することを回避するためには、対話を継続し、外交による解決策を探らなければならない。ロシアはそれに応じる義務がある。