国際結婚などが破綻した際の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」に1日、日本が正式に加盟した。それに合わせて外務省は、訴訟によらず仲裁などでトラブルを解決するための「裁判外紛争解決手続き(ADR)」事業の委託先に沖縄弁護士会を含む全国5機関を指定した。

 ADR事業は、弁護士などの専門家が当事者の間に入って紛争の解決を図るもので、沖縄弁護士会に委託されたことは一定評価できる。

 ハーグ条約は、夫婦の一方が16歳未満の子どもを国外に連れ出し、相手から返還を求められれば原則として、元の国に返さなければならないという内容だ。

 当事者間解決が不調に終われば、子どもを引き渡すかどうかは、家庭裁判所でその是非を判断する。子どもを元の国に戻せば虐待を受ける可能性があると裁判所が判断した場合は、引き渡しを拒否できる。審理するのは東京家裁と大阪家裁のみだ。

 厚生労働省の統計によると沖縄は、妻が日本人で夫が外国人の国際結婚率が全国より高い。その中でも米国人男性との婚姻が約9割を占めており、多くは米軍人・軍属とみられる。

 県内では、外国人の夫の家庭内暴力(DV)や児童虐待などを訴えて、子どもを連れて帰国する事例も少なくないという。

 これらの事情を考慮すればADR事業だけは不十分と言わざるを得ない。沖縄で裁判所の審理ができる環境整備が不可欠だ。政府には、手続きの見直しを求めたい。

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 1983年に発効したハーグ条約には、欧米の主要な国は加盟していたが、日本が国会で条約締結を承認したのは昨年5月だった。

 欧米諸国から早期加盟を求められていた日本が慎重姿勢を取っていたのは、外国人の夫によるDVや虐待被害を訴えて日本人の妻が、子どもを連れ帰るケースが多数あったからだ。

 米軍人・軍属と結婚する例が多い県内の女性の例では、夫が数年で転勤を繰り返すため妻は定職が見つからず経済的基盤が弱いケースが多い。夫のDVや虐待がある場合「子どもを連れて帰るのは最後の安全弁」という、深刻な事例もある。

 政府は、海外でのDV被害などを立証できるようにするため、在外公館による情報収集で邦人をサポートする方針だ。しかし家庭という閉ざされた空間で起こった暴力を証明するのは容易ではない。実効性の確保が課題だ。

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 ハーグ条約の理念は「子の利益」をうたっている。条文では「子の任意の返還」「問題の友好的な解決」を促している。また加盟前に起きた事例でも、政府が親子の面会を支援することを定めている。

 「子どもの利益」を優先するなら、親権をめぐる争いは穏やかな解決が望ましい。子どもの姿を目の前にすれば、そう思うのが親の心ではないか。裁判所による審理環境の整備も必要だが、可能な限りADRによる早期解決に至る事例が相次ぐことを期待したい。