黒田東彦日銀総裁が実施した金融緩和から4日で1年。「異次元」とも称された大胆な緩和策は、県内経済には追い風となった。円安効果で観光客数は過去最高を記録。消費マインドにもプラスに働き、小売業界も好調が続く。一方、輸入に頼る燃油や原材料費は円安で上昇しており、企業収益を圧迫する側面もある。ただ、景気拡大が続く中、専門家は「コスト上昇分を販売価格に転嫁する動きが出始めている」と分析。企業の収益改善が賃上げにつながれば「景気拡大が持続する可能性が高まる」と期待する。

日銀短観の県内業況判断指数(抜粋)

 日銀那覇支店が1日発表した3月の県内企業短期経済観測調査(短観)は、消費増税前の駆け込み需要も重なり、景況感を示す業況判断指数が22年ぶりの高水準を記録。観光や建設、消費関連を中心に企業の好況感は広がっている。

 「新築マンションは完成前に売り切れ、中古物件も動きが良かった。明らかに状況が変わった」。那覇市の不動産業者は、この1年の好調さを振り返る。

 観光業界では、新石垣空港開港や航空路線の拡充に加え、円安効果が上乗せされ、2013年度の観光客数は過去最高になる見通し。

 JTB沖縄の担当者は「海外旅行が割高になり、沖縄への旅行者が増えた。外国客も伸びている」と円安効果を実感する。

 人口増加を背景に好調が続く小売業界でも、海外観光客の売り上げが伸びている。デパートリウボウでは、3月の免税売り上げが前年同月比4倍となった。

 一方、ホテル業界では、円安による燃油や原材料費の高騰で、売り上げは伸びるが利益に反映されない状況も。あるホテルの担当者は「食材費や重油費が上昇し、集客率に対し利益幅が伸び悩んでいるのは否めない」と漏らす。連泊特典で食事プランを付けるなど客室単価の向上対策に取り組んでいる。

 トラック業界も円安の影響で燃料の軽油が高騰し、経営環境は厳しくなった。

 県トラック協会によると、業界全体で、09年から年額32億円の負担増になったという。ただ、好景気から受注は改善傾向にあり、一部の会員からはトラック不足、ドライバー不足を指摘する声がある。

 日銀那覇支店の松野知之支店長は、タイムラグはあるがコスト上昇分を販売価格に反映させる動きが出始め、「企業の業績は改善傾向にある」と分析。「景気拡大を続けるには、個人消費の需要をさらに高める必要がある」とし、収益を確保した企業の「賃上げの動向を注視したい」とした。