電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原発をめぐり、津軽海峡を挟んだ北海道函館市が、国やJパワーを相手に、原発の建設中止や原子炉設置許可の取り消しを求め提訴した。

 自治体による原発差し止めの訴訟は初めてだ。背景には、最短で約23キロの距離にあり、立地自治体並みに事故のリスクを負っているにもかかわらず、原発の稼働・再稼働に際して意思決定に関与できない「周辺自治体」ゆえの不満がある。

 東京電力福島第1原発事故では、広範囲に拡散した放射性物質から身を守るため、多くの住民が住み慣れた地域を離れた。周辺自治体までも役場機能の移転を強いられた。原発の「安全神話」は完全に崩壊したのである。

 原発事故後、政府は新たな原子力災害対策指針を示し、避難計画などを策定する「緊急防護措置区域(UPZ)」を、原発の半径30キロ圏とした。

 函館市はこのUPZにかかる。つまり、大間原発で深刻な事故が起きれば、住民に危険が及ぶ可能性がある地域ということになる。看板である水産業と観光業も深刻な打撃を受ける恐れがある。

 一方で、原発の建設や稼働を認めるかどうか賛否の決定には参加できない。

 2011年4月に当選した工藤寿樹市長が4回にわたり、国やJパワーに大間原発の建設凍結を求めても納得できる回答は得られなかった。東日本大震災で中断していた工事を、12年10月にJパワーが再開した際も、市には事前連絡がなかったという。市が不信の念を抱くのは当然だ。

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 「周辺自治体」が置かれた理不尽な状況に不満を訴えているのは函館市だけではない。

 同市の提訴には、北海道南部にある10市町が賛同している。また、函館と同様に海を挟み四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)に面する大分県でも、再稼働に反対する意見書が市町議会で相次いで可決されている。

 関西電力大飯原発(福井県おおい町)、高浜原発(同県高浜町)の30キロ圏にかかる周辺自治体でも、立地自治体並みに同意を含む安全協定を電力会社と取り交わそうとする動きが出ている。

 「国は意見を聞かず危険だけ押しつけた」と述べた函館市長の言葉は、原発の事業計画や運転報告などの情報が十分得られず、蚊帳の外に置かれてきた多くの自治体の不満と不安を代弁したものでもある。重く受け止めてもらいたい。

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 大間原発は、世界で初めて、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を全炉心で使用できるよう設計されている、という特殊性がある。

 MOX燃料は通常の燃料に比べて制御が難しい。訴状では、その危険性も強く指摘している。

 国は「大間原発は既に原子炉設置許可を受けている」と建設を継続する意向だ。だが、周辺自治体の同意が得られないままの稼働はあり得ないことを認めるべきだ。