来春から小学校で使われる社会科教科書に、領土教育を強める安倍政権の意向が影を落とした。尖閣諸島を「日本固有の領土」と表現し、中国側が違法行為を繰り返しているとの記述も。「外国を敵視している」「領土を守る教育は当然」-。尖閣を抱える八重山は、教科書の“変容”に揺れる。一方、MV22オスプレイの写真が掲載されるなど、基地問題については踏み込んだ記述が見られる。「震災の政治利用」と県内では批判が強かった米軍の「トモダチ作戦」は肯定的に描かれ、本土と沖縄の溝もうかがわせた。

「日本の尖閣 中国は違法」領土の記述

 「沖縄県に属する尖閣諸島」との表現は現行本にあるが、申請本では「日本固有の領土」との記述が初めて登場した。

 最も踏み込んだ表現をしたのは教育出版。5年生用では、尖閣諸島を日本の領土とした上で「その周りの日本の海では、中国の船が侵入し、日本の同意を得ることなく海洋調査を行ったり、違法に漁業を行ったりするなどの行為をくり返しています。これに対して日本は、海上保安庁などによる警戒や取りしまりを強めたり、中国に抗議したりしています」と記載。海上保安庁が訓練している写真も隣に載せた。

 日本文教出版は6年生用で「尖閣諸島は、1895年に沖縄県に編入された日本の領土です。(略)しかし、中国もその領有を主張しています」との文章を載せた。

「トモダチ作戦 住民が感謝」専門家、表現を問題視

 光村図書出版、日本文教出版、東京書籍の3社は、東日本大震災について触れた項目の中で、米軍の支援活動「トモダチ作戦」について記述した。震災後の米軍に対する全国の世論を反映して支援活動を肯定的に捉え、基地が集中する沖縄との認識のずれが浮き彫りとなった。

 光村図書は、被災地で活動する各国の援助隊の写真とともにトモダチ作戦の写真を掲載。「行方不明者の捜索、救援物資の輸送、がれきの片づけなどを精力的に行い、住民から感謝されました」と説明した。

 日本文教は本文で「アメリカ軍は(中略)地しんが発生した直後から、ゆくえ不明者をさがすほかに、救援物資を運んだり、ヘリコプターを使って、取り残された人を助けたりする活動をしました」と記述。米兵ががれきを撤去する様子などの写真を掲載した。

 東京書籍は「がれきの撤去作業をするアメリカの海兵隊」という写真を掲載し「いち早く救助活動が行われました」と説明した。

 トモダチ作戦が行われたのは、普天間飛行場の県内移設やオスプレイの配備に反対する県内世論が高まっている時期。米軍は作戦を通して在沖海兵隊や普天間飛行場の重要性を強調したが、県内では「米軍の存在意義のアピールに利用している」などと批判が上がった。

 早稲田大学の江上能義教授(政治学)は「そのような両面の記述がない。支援に感謝する単純な視点で書かれているが、米軍基地が集中する沖縄から見ると表現に問題がある」と指摘。「教科書を読んだ子どもたちが、軍事的な要素と切り離して『米軍は困った時にいつでも助けてくれる』というイメージを持つ可能性がある」と話した。

「集団自決した人多数」沖縄戦

 沖縄戦や「集団自決(強制集団死)」の記述は、現行の教科書とほとんど変わりはない。

 日本文教出版は「子どもや女性、高齢者の住民までもが戦争に総動員され、戦闘に巻き込まれました。そのため、追い詰められた住民のなかには、集団自決した人も多数いました」と本文で明記。東京書籍は写真の説明文で「追いつめられた住民の中には、集団で自決するなど、悲惨な事態が生じました」と記し、女子学徒の手記も載せた。

 2006年度の高校歴史教科書検定では、集団自決をめぐる「日本軍の強制」が削除され問題になったが、小学校段階ではもともと軍の関与についての記述はない。

 文部科学省は、11年度から適用されている小学校学習指導要領の解説書で「沖縄戦」を取り上げ、学校現場での学習を促した。これに伴い、現行の教科書から沖縄戦の記述は増えている。

「県民 解決願う」基地問題

 日本文教出版は5年生用で、オスプレイが駐機する普天間飛行場の写真を掲載。本文で「国内のアメリカ軍基地の約4分の3は、沖縄県にあるのです。また、基地の整理・移転問題や、アメリカ軍の兵士がおこす事件など、多くの問題をかかえています」と記述した。6年生用では、「基地をなくしてほしいという住民運動がおこなわれたというニュースを見たよ」という会話形式の文章を載せ、「基地NO」「沖縄の民意を踏みにじるな」などと書かれたプラカードを掲げる人たちの写真を掲載した。

 教育出版は5年生用の本文で広大な軍用地について触れ、「沖縄県の人々は、平和なくらしと地域の発展のために、この問題が早く解決されることを願っています」と踏み込んだ表現をした。6年生用ではオスプレイが写った普天間飛行場の写真を掲載した。