憲法解釈の見直しによる集団的自衛権の行使をめぐり、政府は限定的に容認する原案をまとめた。自衛隊の活動を日本領域と公海上に限定、他国領域への派遣は認めない方向で検討している。

 安倍晋三首相(自民党総裁)の直属機関の初会合で、講演した顧問の高村正彦副総裁も政府に歩調を合わせ、限定的容認の認識を示した。

 いずれも、憲法が許容する「必要最小限度の自衛権」に一部の集団的自衛権も含まれるととらえたものだ。

 根拠にしているのが、1959年の砂川事件の最高裁判決というから驚く。55年も前だ。東京都砂川町(現立川市)の米軍基地拡張問題で57年にデモ隊が基地内に入り、7人が刑事特別法違反罪で起訴された事件である。

 東京地裁は駐留米軍は「戦力の保持」に当たり、憲法9条に違反するとして無罪を言い渡した(伊達判決)。これに対し、最高裁は一審判決を破棄、判決の中で「わが国が存立を全うするために必要な自衛措置を取り得ることは国家固有の権能の行使として当然」と述べた。限定的容認はこの部分を根拠にしている。

 砂川事件は駐留米軍の違憲性が争われたもので、集団的自衛権を問題にしていたわけではない。集団的自衛権の限定的容認論は、自分の都合のいいように判決をつまみ食いしているというほかない。

 集団的自衛権を認めないとの政府答弁書が出たのは81年である。山口那津男公明党代表は「砂川事件は集団的自衛権に直接触れていない。政府はそれを知ったうえで(行使を)否定する見解を閣議決定した」と主張している。山口氏の言う通りだ。

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 限定容認論は、集団的自衛権の行使容認に否定的な公明党への説得材料だ。公明党の姿勢も厳しく問われている。平和の党の理念がどんどん薄れてきているからである。

 武器輸出を全面的に見直した「防衛装備移転三原則」、外交・安保政策の指針「国家安全保障戦略」の策定と司令塔となる日本版「NSC」創設、特定秘密保護法の成立など矢継ぎ早に安保政策の転換が進んでいる。愛国心と領土意識を強調した教育政策とも連動した動きである。公明党が「ブレーキ役」になっているとはとてもいえない。

 自民党の石破茂幹事長は地球の裏側まで行くことを排除しないと発言している。実際は歯止めはないのである。

 限定容認論に公明党が賛同すれば戦後、日本が営々と築いてきた平和国家の地位を捨て去るのに加担することになる。公明党には連立離脱の覚悟で協議に臨んでほしい。

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 そもそも閣議決定によって憲法解釈を改めるのはおかしい。憲法はあらゆる法律の頂点に位置する「国の最高法規」である。閣議決定で解釈改憲をもくろむ手法は法秩序を破壊するものである。

 憲法改正を提起するなら本来、手続きを定めた96条にのっとってやるべきである。ハードルが高いため、閣議決定で解釈改憲がなされるなら憲法が最高法規でなくなる。国会も存在意義を失うことを国会議員は肝に銘じるべきだ。