高校ボクシングの指導者で数々の名選手を育てた金城眞吉さん(69)が5日、那覇市内の自宅のジムを閉じた(6日付スポーツ面)

▼ボクシング王国沖縄の礎を築いた功労者。本紙スポーツ面で連載中の「名伯楽のミット」がその熱い指導ぶりを伝えている。亡き妻の清子さんや教え子との濃密な心の交流が胸に迫る

▼練習場との別れを惜しむ人の中には天井の金具を見上げる卒業生もいた。つり下がっていたサンドバッグはもうない。「苦しかったことばかりで楽しい思い出なんか一つもないけど…」と目を潤ませた

▼教え子の多くがヤンチャだった。暴力的で手が付けられない、教室に立ち入り禁止などの問題児を自宅の合宿所で預かり、あいさつや礼儀など生活面の指導を徹底した

▼学校や警察が諦めた場合でも「そんな子こそ、うちで預かる」と率先して受け入れた。合宿所で靴をそろえる息子を見て、その更生ぶりに号泣した母親もいたという

▼この日はかつてのウーマクたちが金城さんを囲んだ。教え子の一人は「監督と出会わなかったら、自分はこうして生きていられなかった」と感謝した。別の教え子は「監督は何事にも本気だった。あのころ、本気で関わってくれる人を求めていたんだと思う」と振り返った。時代は巡っても、子どもたちの周りに「本気の大人」が必要だ。(田嶋正雄)