「この記事について、記者にぜひ質問させてほしい」

 2月23日、岐阜市であった記者会見。小野寺五典防衛相は琉球新報の記事について質問するよう、事前に事務方を通して同行記者に依頼していた。予定通り質問を受けると「全く事実ではない」と答えてみせた。

 陸上自衛隊の配備計画をめぐり、新報は同日付で「石垣に2候補地」と報じた。その場には全国メディアしかおらず、関心が高いとはいえない。記事のコピーまで配らせる自作自演。小野寺氏は「今日はくしくも石垣市長選の告示日。社会の公器としていかがなものか」と力説した。

 以前から沖縄の2紙について「何をしても評価してくれない」と、こぼしていた小野寺氏。翌24日には、さらに「反撃」を強める。新報と日本新聞協会に内容証明郵便で抗議文書を送った。

 防衛省は表向き、沖縄タイムスもその日に配備計画を報じたことを挙げ「地元で懸念が広がっている。防衛省として判断した」と説明した。ただ実際には、石垣市長選で現地入りした自民党の石破茂幹事長らの意向も大きく影響した。「普段から批判的な沖縄の地元紙に、おきゅうを据えるチャンスだったのだろう」。防衛省関係者は明かした。

■警戒感は共通

 異例の抗議を受けた新聞協会は3月19日、「加盟各社の個々の報道について指導・監督する団体ではなく、申し入れを受け入れる立場にはない」と、突っぱねる文書を防衛省に送った。

 タイムスの武富和彦編集局長は、対応を協議した編集委員会の委員。複数の他紙編集局長と話すと、今後、報道の自由への圧力が増すことへの警戒感は共通していたという。

 タイムスは抗議を受けなかったが、新報や協会への抗議が発覚するとスペースを割いて報じた。武富局長は「特定の会社ではなく、マスコミ全体に向けられた圧力だ」と語る。「特に沖縄の各社は、政府側から見れば思い通りにならない目障りな存在かもしれない。だが、県民世論を代表して報道する基本線は譲れない」と強調した。

■「各社連帯を」

 政府が管理する電波を使う放送と違って、新聞には監督官庁がない。新聞労連の日比野敏陽(としあき)委員長は「戦前は紙の供給を通じて統制した。政府は今も、業界団体を通じて新聞を締め上げる仕組みを欲しがっている」と指摘する。防衛省を批判する声明では「『うちは琉球新報ではないから』『沖縄ではないから』と放置すれば、いずれ新聞業界全体が弾圧の対象になる」と警鐘を鳴らす。日比野氏は「各社が連帯して圧力と闘うべきだ」と訴える。(社会部・阿部岳)