【浦添】勢理客の照屋正元(しょうげん)さん(76)が、卵を使った“妙技”を磨いている。殻の内側に絵を描いたり、外側に彫刻したり-。根っからの凝り性で、これまでに取得した国家資格は8種、演奏できるようになった楽器はマンドリンからバイオリン、アコーディオンまで幅広く、踊りは琉舞、日舞を問わない。沖縄戦の影響で学校に通えず、成人してから定時制高校と大学を卒業したという照屋さんは「僕にできないのは浮気くらい」と胸を張る。(平島夏実)

卵を使って作品を生み出す照屋正元さん=西原町中央公民館

鶴と亀を彫り込んでつぼのように仕立てた卵の殻

卵の中から、こちらに向かってにらみを利かせる虎

卵を使って作品を生み出す照屋正元さん=西原町中央公民館 鶴と亀を彫り込んでつぼのように仕立てた卵の殻 卵の中から、こちらに向かってにらみを利かせる虎

 鶏の卵に開いた直径約2センチの穴。内側をのぞくと、驚きの世界が広がる。デイゴの木の下で戯れるヤンバルクイナの親子、にらみを利かせる虎、山陰の川に浮かぶ釣り船-。卵の天頂にチョウやツバメを飛ばした作品もある。ウズラの卵の内側にも5頭の象、滝を登る2匹のコイが描かれている。

 「とにかく描きにくい所に描いてやろう」

 油絵も水墨画も極めた照屋さんは3年前、思い立った。当初は、卵に小さな穴を開ける作業すら失敗続き。チュルっと音を立てて生卵を飲むうち、水中で刃を立てるとうまくいくことに気づいた。

 筆は特注。山原で採ってきた細い竹を火であぶって曲げ、インクを吸わせる。描く時はアトリエに一晩こもる。手元は普段から、箸に串の先端を当てる訓練で鍛えておく。卵の殻に彫刻をする場合は、ティッシュペーパーを持って「触れるか触れないかの指加減」を習得したという。

 「僕のあだ名は『かんぴー』。右のこめかみに骨まで届くカンパチ(弾痕)があるからね。それでこんなに頭がおかしいはずよ」と笑い飛ばすが、泊高校定時制を経て沖縄大学を卒業したのが40歳ごろ。小学校に通えなかったこともあり、学ぶことへの執念は尽きない。

 ほかにも目標が二つ。一つは、鶏卵以上に難しい素材に描くこと。「柔らかいヤモリの卵とかね」

 二つ目は人生記を書くこと。グアムで米軍施設の建設にも携わった。老人ホームの慰問では、バレエ服で白鳥を模して踊ったこともある。公園でガジュマルの根の美しさに見入り、警官に職務質問されたこともある。

 「正元の元は元気の元。座って話をさせれば、まさかビーラー(弱々しい)とは思えないでしょ」

 古希を超えてなお、照屋さんの探求は続く。