東京の桜の見ごろも終えつつあるようだ。淡い紅があふれた木々に、若芽の新緑が映えるようになった

 ▼遠く被災地では、人気ドラマのモデルになった「三陸鉄道」が3年余りの時間をかけ、全面復旧したとのニュースがあった。桜前線は順調に北上しており、被災地にも間もなく花便りが届くことだろう

 ▼花盛りにやや浮かれ気分で読書をしていると、明治・大正期の詩人、山村暮鳥の「桜」に出会った。〈さくらだといふ 春だといふ 一寸(ちょっと)、お待ち どこかに 泣いてる人もあらうに〉。1世紀ほども前の詩だが、今に重なる趣がいい。被災した人の胸の内は一様でない。心に空いた穴を涙で埋め続ける人もいるだろう

 ▼無理に興をさます必要もないが、泣いている人を思う詩人の優しさも持ち合わせていたい。とりわけ日常が浮かれてしまった観のある東京では

 ▼かの地、人を思ってみる。その欠如が、沖縄の問題に共感が広がらず、わだかまる原因にもなっている。上京して何度か沖縄について話す機会を通じ、知られていないものだと実感した。分かって、と促すのもなかなかエネルギーがいるものだ

 ▼新宿御苑では、圧巻の淡紅色に混じって、沖縄で主流の寒緋桜の濃いピンクにも結構な人だかりがあった。たもとに「へのこ」とでも書き置いては…。チクリとよぎった。(宮城栄作)