「ただ偽りのない仕事をして、ご恩返しをしようと心に誓っています」。長寿の秘訣(ひけつ)を問われて、本紙(6日付)にこう語った染織家で人間国宝の平良敏子さん(93)のたたずまいに、ほれぼれとした

▼「何度も九死に一生を得ているんです」という言葉通り、80歳代後半に木灰で足に大やけどを負い皮膚移植が必要といわれたのに手術せずに済んだ。4年前は階段から落ちても骨折しなかった

▼インタビューに散りばめられた健康長寿のヒントの一つに「肉が好きです」という言葉を見つけた。豚も牛も、焼き肉やおつゆにして召し上がるという

▼長い間、中高年の健康に良い食事は肉や油・脂が少なく、野菜や魚中心の粗食だと思い込んできた。ところが、これはメタボリック症候群の予防が必要な40代~50代の中年向けで、60代以上には当てはまらないらしい

▼粗食を続けると「新型栄養失調」や「低栄養」状態に陥り、老化が進む。低栄養の高齢者は近年増えて3割近くに上るという推計や、死亡リスクがそうでない人の1・5倍は高くなるという研究結果もある

▼粗食礼賛の誤解は、食生活の情報が中年向けでとどまり、更新されていないのが一因だろう。低栄養状態を防ぐ食生活の知識を広める必要がある。健康のために気遣った食事が、逆効果を招いては元も子もない。(与那嶺一枝)