八重山地区の中学校公民教科書の採択問題で、竹富町教育委員会は10日、教科書無償措置法の改正を受け、町単独での採択を検討していく方針を確認した。

 国や県教委には、竹富町教委の判断を尊重するよう求めたい。

 八重山採択地区では2011年8月、協議会答申に基づいて石垣市、与那国町が12年度から育鵬社版の使用を決めた。一方、竹富町は地方教育行政法で教科書の採択権限が各教委にある、として東京書籍版を採択した。これに対し文部科学省は、同じ地区内で教科書を統一するよう定める教科書無償措置法に竹富町が違反していると主張。竹富町教委に是正要求を出した。

 無償措置法と地方教育行政法という関連法の矛盾が今回の事態を招いた。政府もそう認識したからこそ、教科書無償措置法の改正に踏み切ったのではないか。

 9日に成立した改正教科書無償措置法は、採択地区の構成を「市郡」から「市町村」に見直した。これにより、法令上は県教委の判断で竹富町単独での採択が認められる。

 ところが、文科省は「八重山は共同エリア」とし、採択地区の設定が不適切だと判断した場合は「指導、助言することもあり得る」と指摘。竹富町が独自に採択する動きをけん制している。

 一方、下村博文文科相は3月の会見で「(採択地区は)市町村教委の意見を尊重しながら、県教委が最終的に決定する」と明言。県教委が竹富町を分離しても「法の違反には当たらない」と述べた。

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 政府見解は腰の定まらない印象をぬぐえない。国の恣意(しい)的な法律運用がまかり通れば不当のそしりは免れない。

 教育への政治介入が、教科書の内容にも影響を及ぼしつつある。

 安倍晋三首相は昨年3月、「領土の範囲を理解させ、日本の正当な主張を教育する」と国会で答弁した。文科省は1月、教科書作成や教員による指導の指針となる中学校と高校の学習指導要領解説書を改定。尖閣諸島と竹島(島根県)を「我が国固有の領土」と明記することを決めた。

 一方、来年4月から使われる小学校社会の教科書は、4社すべての出版社が尖閣諸島と竹島をめぐる問題を記述した。「日本固有の領土」との表現も初めて登場した。これは、出版社側の自主的な動きだ。愛国心育成を重視する安倍政権への配慮と、経営面で苦境に追い込まれたくない出版社側の内情が働いている。

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 政権の思惑で教育環境が変化する状況は異様だ。安倍政権の教育への介入は、歴史認識の問題とも相まって、中国や韓国との間で不協和音を招く要因にもなっている。

 竹富町教委は町内の小中学校の入学式が開かれた今月7日、東京書籍版を生徒に配布した。費用は篤志家の寄付でまかない、「現場に混乱はない」というのが地元の声だ。「教育環境に影響を与えないよう冷静に授業を進める」と教員は話している。

 国は是正要求を取り下げ、竹富町への政治介入に終止符を打つべき段階に来ている。