「尖閣は沖縄のような島だと思っている人もいるかもしれないが、実際には極めて小さな島の連なりだ。いわゆる『脅威』を除去するために、兵員を上陸させる必要すらないかもしれない」

 ポトマックリバーの桜が満開となる4月。米ワシントン近郊で開かれた米海軍協会主催の恒例のシンポジウムに出席した在日米海兵隊トップのウィスラー司令官は、国防担当記者らとの朝食会見で、たとえ中国軍が侵入したとしても、空と海からの攻撃だけで、米軍は十分な奪還能力を発揮できると語った。

 日本では、尖閣防衛には海兵隊のプレゼンスが不可欠といった論理が横行しているが、尖閣奪回に、海兵隊の本業である強襲揚陸作戦は必要ない、と在日米海兵隊トップがきっぱり否定したわけだから、驚いた人も多いかもしれない。

 ここでもう一つ注目しておきたいのは、同司令官が、海兵隊と同様の機能を持とうと試みる陸軍に警戒心をあらわにしたことだ。

 「海兵隊はもう何年もの間、第二の陸軍として行動してきた」

 約3年前の春、時の国防長官だったゲーツ氏は、海軍協会の講演で、旧態然とした思考体系の下、第2次大戦後も態勢が変わらぬ海兵隊の在り方に疑問を呈し、「イラクやアフガニスタンになぜこんなに多くの海兵隊員がいるのか。二つも陸軍は必要ない」と戦略構造の見直しを命じた。

 それから半年後。エイモス総司令官は「特殊作戦部隊より大きく、陸軍部隊より軽量な中量級部隊を主軸に、海から迅速に対応する」と海兵隊本来の持ち場へと回帰した役割を定め直したはずだった。

 一時はアジア太平洋地域における役割を問われたものの、辺野古の埋め立て承認で危機を切り抜けた今、普天間の5年内停止をあっさり否定し、尖閣に対応するのは空と海だと言い、陸軍との縄張り争いを隠そうともしない。そんな海兵隊の姿を見ていると、沖縄は軍の勝手な論理に翻弄(ほんろう)されているだけなのではないかと思えてくる。納得いかない。(平安名純代・米国特約記者)