東京電力福島第1原発事故から3年がすぎたのに、いまだに約14万人が故郷に帰れず、困難な避難生活を強いられている。事故は収束するどころか、現在進行形である。政府は過酷な現実から目をそらし、原発事故をなかったことにでもしたいのだろうか。

 政府は国の中長期的な指針となる「エネルギー基本計画」を閣議決定した。原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を進める。

 原発事故後、民主党政権が掲げた「2030年代に原発ゼロ」とする方針を破棄、事故前に完全に戻った。

 基本計画は原発依存度を可能な限り低減させるとしながら、将来の電源比率を示さず、原発について「確保していく規模を見極める」と、新増設に含みを持たせている。

 原発事故後、初めて決定する基本計画から見えるのは、経済を最優先し反省しない安倍内閣のあからさまな原発回帰の姿である。原発へ前のめりの姿勢は与党協議の中で当初、基本計画の序文から「深い反省を一時たりとも放念してはならない」との表現が削除された経緯からも分かる。

 使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルを維持する。約1兆円を投じながらトラブル続きで実用化のめどが立たない高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)は核燃料サイクルを担うが、すでに破綻しているといっていい。だが、高レベル放射性廃棄物の量を減らすための「国際的な研究拠点」として存続させるという。「トイレなきマンション」といわれる「核のごみ」への対処も示さない。無責任の極みである。

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 民意をくみ取り、基本計画に取り入れようとする政府の姿勢が見られない。

 意見公募(パブリックコメント)でどのような意見が多かったかを明らかにしないことからもうかがえる。閣議決定に至る過程で、どのような議論がなされたのか、透明性に著しく欠ける。「原発活用」の結論ありき、なのである。そんな基本計画に正当性があるだろうか。

 原発の再稼働について共同通信社が3月下旬に実施した全国電話世論調査では、反対が56・6%を占め、賛成は36・2%にとどまった。

 同じく3月初旬に本社加盟の日本世論調査会が実施した全国面接世論調査で、全電力に占める原発の望ましい比率について「即時ゼロ」「段階的に減らし、将来はゼロ」を合わせた脱原発が69%を占め、原発容認・推進は29%にすぎなかった。

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 原発回帰は与党の自民、公明両党の公約にも反している。自民党は政権を取り戻した12年の衆院選の公約で「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」と、将来的な「脱原発依存」をうたった。公明党も「可能な限り速やかに原発ゼロを目指す」とし「『もんじゅは廃止』」と明記した。

 民意にも、公約にも背を向けた基本計画である。

 過酷事故に見舞われ、塗炭の苦しみが続く福島のことをもう忘れてしまったのか。原発政策を「3・11」前に戻すことは認められない。