制限時間はとうに過ぎ、もしやリタイアと不安がよぎるころ、会場から湧き上がった拍手で気づいた。90歳の女性が乗った車椅子をゆっくり押しながら、家族ら7人の大所帯が満面の笑みでゴールをくぐった

▼陽気に誘われ、途中眠りに落ちた闘病中の妻を見ながら「彼女といい経験ができた。これからの人生をまた切り開いていける」。3キロを完走し、そう語る夫は87歳。人生という長いマラソンを家族と走り続ける姿に、胸が熱くなった

▼ゴール後に話を聞いた89歳の別の女性は、顔に痛々しいばんそうこう。「あと1キロのところで転んじゃって」。でも走るのは生きがいよと元気な姿に、こちらも勇気づけられた

▼先週末に開かれた伊江島一周マラソンは今年で22回を数える。参加者は増え、今回は過去最多の2580人が応募した。島の人口が約4700人だから、その日だけは一気に1・5倍にもなる一大イベントだ

▼1993年、第1回大会当時の新聞の見出しは「3部門に636人」。いまや4倍近いランナーが、島のシンボル、伊江島タッチューを仰ぎながら4コースで汗を流した

▼ゴール後、手をつなぎ走った子の小さな頭を「よく頑張った」となでる姿。市民マラソンのほのぼの感は、独特でいい。走る理由は人それぞれ。だが走った後の爽快感はきっと同じだ。(儀間多美子)