文部科学省は教育行政を預かる役所として、学校現場の静かな教育環境を維持する義務がある。体面やメンツにこだわって、いつまでもこの問題を引きずるべきではない。 この際、文科省に提案したいのは「五分五分の論理」による軟着陸である。国が違法確認訴訟を提起するよりも、そのほうがはるかに前向きで、教育的で、地方分権の趣旨にもかなっている。

 文科省の前川喜平初等中等教育局長は17日、竹富町教育委員会の慶田盛安三教育長に会い、東京書籍版を副読本にしてはどうか、と誘い水を投げた。平たく言えば、こういうことである。

 (1)八重山採択地区協議会(石垣市、竹富町、与那国町)が選定した育鵬社版の公民教科書を使わずに、竹富町教委だけが独自に東京書籍版を使っているのは教科書無償措置法に反している。

 (2)下村博文文科相は3月、

地方自治法に基づく是正要求を行った。竹富町教委は速やかに教科書を変更し、違法状態を解消すべきである。

 (3)ただし、現在使用している東京書籍版を副読本として使うのは差し支えない。

 この案は、一見、譲歩案のように見えるが、学校現場への配慮にかける。竹富町教委はすでに東京書籍版の教科書を生徒に配布している。学校現場ではこの教科書を使って授業が行われており、それで何の問題も生じていない。

 そもそも平地に波乱を起こし、問題をもつれさせたのは誰なのか。竹富町教委を「違法状態だ」と指摘するだけでは著しく公平さに欠ける。

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 私たちが提案する「五分五分の論理」とは、竹富町教委にも十分すぎるほど理があることを認めることが前提である。

 安倍政権があわてて改正教科書無償措置法を成立させたのはなぜか。採択地区協議会を構成する市町の間で協議が整わなかった場合の再協議の手続きや最終的な合意形成の方法などがあいまいだったからだ。

 地方教育行政法という別の法律は、教科書の採択を教育委員会の権限だと定めている。竹富町教委は、この法律に基づいて東京書籍版を独自に採択したのである。

 では、「五分五分の論理」とはどのようなものか。

 民主党政権のとき、当時の中川正春文科相は、内閣法制局見解を紹介しながら、「地方公共団体みずから教科書を購入して生徒に無償で供与するということまで法令上禁止されるものではない」と答弁している。

 国の一貫性のなさ、対応のまずさが今日の混乱を招いた最大の要因である。

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 二つの法律の矛盾を放置するなど、この問題では政府にも大きな責任があり、そのことを前提にして、現場が混乱しないような軟着陸の道を模索することが「五分五分の論理」である。

 これからのことは改正教科書無償措置法に準じるにしても、これまでのことは「五分五分の論理」によって処理することが可能なはずだ。

 要は安倍政権の姿勢にかかっている。