浦添市美術館の隣に、国内最大のチョウ、オオゴマダラが飛び交うビニールハウスがある。3月の沖縄国際映画祭で「うちなーディープスポット部門賞」に輝いたてだこチョウハウスだ。「オオゴマダラを楽しむ会」の與儀ひとみさん(56)がチョウ好きの仲間とボランティアで世話する。幻想的な空間に見とれる人、涙を流す人-。ハウスでドラマも育んでいる。

「オオゴマダラは正面から指を近づけると乗る習性があるんです」と話す與儀ひとみさん=13日、てだこチョウハウス

金色のさなぎから羽化する場面も観察できる

「オオゴマダラは正面から指を近づけると乗る習性があるんです」と話す與儀ひとみさん=13日、てだこチョウハウス 金色のさなぎから羽化する場面も観察できる

 ハウスは風通しが良く、ナデシコやランタナが咲く。耳を澄ますと、30匹を超える成虫の優雅な羽音や、幼虫がエサのホウライカガミをジャリジャリ食べる音が聞こえる。

 「20歳になってから、こんなすごい景色、見たことありません」「ずっとここにいたい」-。訪れた人はメッセージ帳に感動をつづっていく。

 「手に止まってくすぐったい! 弟は怖がって触れない。かわいそう」と、チョウとのスキンシップを楽しむ女の子のコメントも。

 ハウスは2000年ごろ、「オオゴマダラを楽しむ会」が浦添市の助成金で設置。当時は県内各地の小学校などでチョウハウスブームになったが、間もなく荒れてしまったという。学校や地域の手伝いをしたいと考えた與儀さんが、12年春に「てだこチョウハウス」を復活させた。

 「ハウスの研究中に次男が『腸炎(チョウ園)』になって。これはもう決定的だ、やるしかないと思った」

 與儀さん自身も心筋梗塞で倒れたが、朝晩の世話を欠かさない。市内外のチョウ好きからホウライカガミの差し入れがあり、卵や幼虫を交換するなど交流も深めてきた。

 ハウスには、子どもたちがチョウの一生を観察に来るほか、障がいのある人々の憩いの場にもなっている。

 足を患った人が、羽化に失敗したチョウを見て涙を流したこともあるという。

 「沖縄戦時、米兵に追い詰められて死を考えた家族がチョウをみて思いとどまった-というエピソードも聞いたことがあります」

 與儀さんは、チョウの底知れない力を感じながら、今日もハウスで世話をしている。