安倍晋三首相とオバマ大統領の首脳会談の内容を盛り込んだ日米共同声明は、環太平洋連携協定(TPP)交渉で日米双方の溝が埋まらず、1日遅れで発表された。

 共同声明では、米軍普天間飛行場を辺野古沿岸部へ「早期移設」することを強調し、基地の統合で「長期的に持続可能な米軍のプレゼンス(存在)を確かなものとする」とうたっている。代替施設は、普天間にはない強襲揚陸艦が接岸可能となる護岸が計画され、負担軽減とは全く相いれない。辺野古移設で沖縄を半永久的に軍事要塞(ようさい)の島にする意図があからさまだ。共同声明にある「米軍の影響を軽減する」こととも明らかに矛盾する。

 辺野古移設に県民の7割が反対する中、仲井真弘多知事が昨年12月、自身の選挙公約の肝である「県外移設」を破棄し、埋め立てを承認した。承認に何の正当性もない。

 安倍首相はオバマ大統領との会談で、承認の事実上の条件である普天間の「5年以内の運用停止」や「オスプレイ県外訓練の増加」などを伝達した。記者会見ではわざわざ仲井真知事の名前を挙げた。

 安倍首相が要請を伝えたのは、県民の反発が収まらない仲井真知事を孤立させないことと、日本政府が努力していることを演出するポーズにすぎない。最大の政治決戦となることし11月の知事選を見据えていることも間違いない。

 これに対し米側は日本の「国内の状況説明」との受け止め方だ。オバマ大統領が何の言及もせず「聞き置き」、共同声明に何も盛り込まれなかったことからも分かる。

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 日米両政府の空疎なパフォーマンスには既視感が伴う。

 稲嶺恵一前知事が移設条件とした「15年使用期限」と「軍民共用空港」である。仲井真知事の「5年以内の運用停止」などが安倍首相との口約束のレベルにとどまっているのに比べ、稲嶺前知事の条件は1999年12月に閣議決定されている。それでさえ、当時の自民党政権も沖縄の要望として、単に米側に伝えるだけでその繰り返しだった。

 日本政府に本気で対米交渉をしようとする意思はさらさらない。安倍首相が「わが国としてできることはすべて行う」というのは、裏を返せば米国ができないといえばできないということである。

 看過できないのは、安倍首相が会談で「普天間移設は強い意志をもって、工事を早期かつ着実に進めていく」と強権的にでも移設する考えを伝えていることだ。

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 仲井真知事の口から、なお堅持しているという「県外移設」の言葉を聞くことがとんとなくなった。宜野湾市より辺野古の方が危険性が落ちるなどと露骨な言い方をするようになった。県民の生命、財産を等しく守るのが県知事の最大の役目ではないのか。

 仲井真知事の罪は重い。官僚出身の知事であり、自身の要請がこの程度であることを知らないわけがない。

 日米両政府、そして仲井真知事は「共犯関係」にある。知事要請に何の実効性もないのに、あたかもあるような役回りを演じる。見るに堪えない芝居というほかない。