1年前のあの日の光景を忘れることができない。

 東京で開かれた政府主催の「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」の閉会間際。会場から突然、「テンノーヘイカ、バンザーイ」の声が上がり、壇上の安倍晋三首相らが一斉に唱和した、あの光景。天皇・皇后両陛下の、あのこわばった表情。

 1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効してから、あすで62年になる。

 戦争に敗れ米軍に占領された日本は講和条約によって独立を回復し、戦場となった沖縄は条約第3条によって日本から切り離され、米国の事実上の軍事植民地となった。

 安倍政権は今年、式典開催を見送った。昨年、各方面から反発や批判が上がり、天皇の政治利用が問題になったことを思えば、当然の判断である。

 「4・28」は日常の暮らしや政治の現実とは無関係な、遠い過去の話なのだろうか。決してそうではない。

 講和条約と、講和後の米軍駐留を認めた旧安保条約、駐留米軍の地位などを定めた行政協定(地位協定の前身)は、セットで構想され、同時に発効した。冷戦の顕在化に対応するために形成されたこの体制は、一部中身を変えて今でも、日本や沖縄を深く拘束している。

 安倍首相は、講和条約によって主権が完全に回復したことを強調したが、式典開催で浮かび上がったのは、半主権状態ともいうべきいくつもの「不都合な事実」であった。この状態は沖縄において今も顕著である。

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 例えば、オスプレイは日本の航空法の適用を受けず、飛行訓練ルートも日本政府が口出しできない。県や自治体が約束違反を指摘しても、日米取り決めそのものが抜け穴だらけ。

 米軍は基地返還の際の原状回復義務が免除されている。このため、返還後に土中から有害物質を含むドラム缶などが見つかる事案が相次いでいる。地位協定には環境条項がない。 

 東京を中心とした首都圏の航空管制圏や電波の周波数帯域は今も米軍に押さえられている。米国に対する極端な従属的姿勢は、米軍基地のない地域からは見えにくい。

 その一方で安倍首相は、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認に突き進む。

 自民党幹事長時代に安倍首相は、岡崎久彦氏との対談で「軍事同盟というのは“血の同盟”です」と語り、次のように指摘した。

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 米軍が攻撃されたときに自衛隊が血を流すことができなければ「完全なイコールパートナーと言えるでしょうか」(『この国を守る決意』、2004年1月発行)。

 解釈改憲によって集団的自衛権の行使を容認し、一内閣

の一存で“血の同盟”化を図ることは憲法上、とうてい許されない。

 “血の同盟”に昇格させた上でなお、膨大な米軍基地を無償で提供し続け、湯水のように思いやり予算を支出し続け、地位協定を維持し続けるつもりなのだろうか。それこそ主権喪失である。