任期満了に伴う沖縄市長選は、保守系無所属の新人で前県議の桑江朝千夫氏(58)=自民・公明推薦、そうぞう・維新・民主支持=が初当選を果たした。故朝幸氏と父子2代で市長を務めることになる。

 現市政の継続を訴えた革新・中道系無所属の新人で前副市長の島袋芳敬氏(64)=社民・共産・社大・生活推薦=は及ばなかった。市民は市政刷新を選択した。桑江陣営は「革新不況」と主張し、1998年に保守陣営が県政を奪還した際の知事選で使用された「県政不況」を思い起こさせるイメージ戦略をとった。

 桑江氏の政策はハード、ソフトのあらゆる分野を網羅した95項目に上る「くわえビジョン」に示されている。中でも桑江氏が街頭演説で訴えたのはハコモノだ。「沖縄こどもの国を日本一の動物園に」「1万人規模の多目的アリーナ建設」「公設民営のオキナワサーキット場建設」などである。桑江氏は国、県との信頼関係を構築しており、財源の裏付けがあると強調する。だが、手掛けるとなると、市にも大きな財政負担がのしかかるのを忘れてはならない。

 沖縄市はこれまでも複合商業施設「コリンザ」、ミュージックタウン「音市場」など地域活性化の核をハコモノに求めてきたが、頓挫しているのが現状だ。

 「くわえビジョン」には具体的な数値目標が盛り込まれておらず、政策の羅列に陥る恐れがある。期待を集めた大型プロジェクトがなぜ、うまくいかなかったのか。徹底的に検証するのが先だろう。

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 沖縄市長選が注目を集めたのは、11月に予定されている県内最大の政治決戦である知事選と連動しているからだ。

 特に仲井真弘多知事から辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り付けた政府、与党にとっては知事選の前哨戦である。1月の名護市長選では辺野古推進を公約した候補者を、政府が強力にプッシュしたが敗れた。沖縄市長選にかける政府、与党の意気込みは市長選に投入した幹部の顔ぶれに表れている。市長選を丸抱えしたといっても過言でない。

 桑江氏本人は、辺野古移設問題に「ノーコメント」と触れない選挙戦術をとった。

 このため、公明党県本部は桑江氏を推薦することができたが、今後の立ち位置は微妙だ。県本部は昨年12月、知事に辺野古移設に反対する提言をしている。反対と推進で真っ向対立した名護市長選では、県本部は自主投票を決めている。辺野古移設問題が最大の争点となる県知事選では流動化する可能性がある。

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 沖縄市は那覇市に次ぐ第2の都市といいながら、地盤沈下が激しい。周辺市町村からも挟撃されている。特効薬を見いだすことができない中心市街地の衰退、高い失業率、低迷する市民所得…。市政が保守であっても、革新であっても変わらぬ沖縄市の課題である。待機児童数も高止まりだ。桑江氏は市議を3期、県議も2期途中まで務め、状況は熟知しているはずだ。

 桑江氏には、政策に優先順位を付けた上で、閉塞(へいそく)感の打破に期待を込めた市民に応えてもらいたい。