国賓待遇で訪日したオバマ米大統領は、尖閣諸島に日米安全保障条約の第5条が適用されると明言した。これまで歴代の大統領が明言してこなかったものを、なぜ今ここであらためて表明する必要があったのか。

 日本市場の開放が自国の経済回復につながると考えるオバマ政権は、訪日の目的を環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意に定め、日本が欲する尖閣への安保適用宣言と引き換えに譲歩を引き出す外交的効果を狙っていた。しかし、交渉が難航すると共同宣言を人質にとり、オバマ氏は自身の滞日中に結論を出すよう圧力をかけた。

 こうした高圧的な態度は、米軍基地をめぐる交渉姿勢にも通じるものだ。ここで注意したいのは、オバマ政権が尖閣への適用を宣言するリスクを承知した上で取引の材料にしたことだ。

 オバマ氏は、日米首脳会談後の安倍首相との共同記者会見で、「日本と中国が対話や信頼醸成より、この問題をエスカレートさせるのは重大な過ち(profound mistake)だと私は首相に直接伝えた」と釘を刺し、その上で尖閣への適用宣言は、自分が生まれる前に結ばれた条約の内容の確認にすぎないと補足した。

 確かにオバマ氏は日中に対話を促したが、共同声明には尖閣への第5条の対日防衛義務が明記され、中国はこれに強く反発した。

 今の米国に、日中の仲介役を務める力量があるのかどうかも疑問だ。

 安倍氏は昨年12月、バイデン副大統領の忠告を無視して靖国神社を参拝。自身の歴史観をめぐる信条に関しては米国の警告に耳を傾けないことを証明した。

 こうした事実を踏まえると、オバマ氏がたとえ言葉を尽くして説明したとしても、「米国が尖閣への安保適用を明言した」という事実が一人歩きする可能性は十分予見できたはずだ。

 果たして重大な過ちを犯したのは誰なのか。一つだけ確かなのは、日米同盟というものが、それほど強固なものではないということである。(平安名純代・米国特約記者)