本土から切り離された「4・28」、復帰した「5・15」、苦難の現代の始まりを象徴する「6・23」。沖縄の上半期は、歩んできた歴史をたどり、後世に引き継ぐ未来をじっくり考える時期でもある

▼この期間を包み込むように7月まで開かれている美術展がある。小さな民の物語を描き続けてきた画家・宮良瑛子さん(那覇市)の個展。「沖縄戦の図」や「原爆の図」で知られる丸木位里、俊夫妻が埼玉県に建てた「丸木美術館」が会場となっている

▼繊細さと迫力で訴える夫妻の大作とともに、平和と命と女性を一貫して画題としてきた宮良さんの約70点は、沖縄の抱える歴史や社会問題、人々の痛みに対する想像を深める機会を与えるに違いない

▼「大先生の絵と並んで大丈夫かな」とつつましく、権威主義を嫌う。高度成長期に画家を志した。当時から絵を売って金持ちになる風潮に反発した

▼弱きがくじかれる世への抵抗と、「描かなければ」との表現者の意地を養分に実らせた作品群であろう。「泥臭い絵でぶつかるしかない。私にはこれしかないから」。作家に思うことがあっても直接的に表現することを避ける主流の美術とは一線を画す

▼少数の沖縄で培った視点を、多数派に照射する覚悟。小さな個を慈しんできた79歳の強さに感じ入った。多くの人に見てもらいたい。(宮城栄作)