背筋が凍る思いがする。格安航空会社(LCC)の旅客機は高度が下がりすぎて海上に異常接近していた。「墜落したのと同じ」とみる航空専門家もいる。運航会社は深刻に受け止めるべきだ。

 LCCの旅客機は、過去最高の記録を更新する沖縄観光を後押しする重要なファクターである。だが安全という大前提があってこそだ。運航会社は路線の急拡大でパイロットが確保できないなどの事情を抱えており、安全体制が万全だったのか、国の運輸安全委員会が調査に乗り出した。原因究明を徹底し、再発防止につなげなければならない。

 LCCのピーチ・アビエーション(本社・大阪府)の石垣発エアバスA320-200型が着陸しようとして海面に異常接近した。アラームで危険を知らせる「地上接近警報装置」が作動したため、機首を上げて立て直しその後着陸した。空港の北約7キロの地点で高度約75メートルまで降下。このまま飛行していたら20秒後には海面に墜落していた。

 乗客乗員計59人にけがはなかったが、国土交通省は事故につながりかねない「重大インシデント」と認定した。操縦はアルゼンチン国籍の男性機長がしていた。日本人の女性副操縦士が管制官と無線交信し、機長に伝えていた。

 調べに対し機長は「管制官から降下の指示が出たと勘違いした」、管制官は「高度に関する指示は出していない」と食い違っている。機長は管制官の指示を復唱することになっており、操縦室での意思疎通に疑問を呈する見方も出ている。機体に異常は見つからず、人為的ミスの可能性が高いと指摘されている。

    ■    ■

 ピーチ・アビエーションは日本初の本格的なLCCで、4月28日には搭乗者数が累計500万人を達成するなどリーダー的存在だ。開業から約2年2カ月で、便数や就航先を増やすなどの路線網の拡大方針が目標達成を早めた。

 関西空港が本拠のピーチ社は、那覇を第二の拠点に位置付けている。沖縄関係では2012年の那覇-関空の就航を皮切りに、昨年9月に那覇-石垣、那覇-桃園空港(台湾)を増便、7月には那覇-福岡を計画している。

 ただ、ここにきて気になる動きが出ている。5月19日~6月30日の間、那覇-関空を含む国内線、国際線の448便の減便を決めた。夏ダイヤが終わる10月25日までに最大2088便が減便する恐れもある。機長の病欠が相次ぎ、補充が難しいからだ。今回の重大インシデントとの因果関係はないのか。

    ■    ■

 警報が作動した場合は、社内規定で運航できないが、機長らは那覇を出発して関空に戻っていた。警報について会社に報告していなかった。安全性に対するほころびの兆候ではないか。大量輸送を担う交通機関は、ひとたび事故となれば大惨事を引き起こす。

 ピーチ社は安全理念の一つに「安全に少しでも疑問があれば、疑問をクリアにするために立ち止まり、クリアになってから先に進む」ことを掲げている。利用者の支持を失わないためにも、その理念を実践しなければならない。