歴史の歯車がきしきし音を立てて逆回転しているような印象である。

 1992年までにフィリピンのスービック海軍基地やクラーク空軍基地から撤退した米軍が、22年ぶりに戻ってくることになった。

 米国とフィリピンは、オバマ大統領のアジア4カ国歴訪の旅に合わせて4月28日、新軍事協定に調印した。これによって米軍はフィリピン軍施設の使用だけでなく、基地内での新たな施設建設も認められる。今後、海兵隊をローテーション(巡回)配置することになりそうだ。

 冷戦の終結と住民の反米感情の高まりを受けてスービック、クラーク両基地を返還させたフィリピン政府は、基地跡地を経済特区に指定し、再開発事業を進めた。フィリピンに刺激され、県内でも基地返還への期待感が高まり、自治体や女性団体などによる跡利用調査が相次いだ。

 自らの意思で米軍撤退を決め、憲法に外国軍の常駐禁止規定を盛り込んだにもかかわらず、フィリピン政府はなぜ米軍回帰を認めたのか。そこには、力を背景にした中国の領有権主張に危機感を募らせる「小国」の追い詰められた姿がある。

 東シナ海では尖閣諸島をめぐって日中が、南シナ海では南沙・中沙・西沙諸島などの岩礁をめぐって中国とフィリピン、ベトナム、マレーシアなどが、中国と激しく対立する。米軍のフィリピン回帰によって対立を固定化・長期化させてはならない。対話の機運を高め、行動規範の策定につなげることが大切だ。

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 オバマ大統領は、最初の訪問地日本で、尖閣諸島が日米安保条約5条の適用対象であることを明言し、最後の訪問地フィリピンでは、新軍事協定に調印した。

 オバマ大統領の4カ国歴訪の旅は、米国に対する同盟国の疑念を払拭(ふっしょく)し、アジア重視のリバランス(再均衡)政策を目に見える形で示すのがねらいだった。

 オバマ大統領は同盟国の結束を強調する一方で、中国封じ込めではない、ということを訪問先で何度も強調した。「日米対中国」という構図を描いたり、中国包囲網を形成するような外交姿勢は示していないのである。

 領土ナショナリズムが高まっている日本では、日米が一緒になって中国を封じ込め、いざとなったら米軍を抱き込んで共同で対処するという期待感が強いが、対話、信頼醸成、危機管理、行動規範策定などの具体的取り組みを欠いた米軍への心理的依存は極めて危うい。

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 沖縄戦が終わって復興への動きが始まったと思ったら、朝鮮戦争が起き、沖縄の軍事要塞化が進んだ。施政権が返還されても基地の自由使用という特権は維持され、冷戦終結後も沖縄に平和の配当はなかった。逆に、フィリピンのクラーク基地返還によって沖縄では負担が増した。

 今度は中国の大国化を背景に、東シナ海と南シナ海で領有権争いが顕在化している。またしても沖縄は、理不尽としかいいようのない苦難を背負わされてしまったのだ。