病気を診断する方法として、古い表現ですが「視尿術」という方法があります。文字どおり、肉眼で見た尿の性状から病状を判断する方法です。

 近世のころまで医療は病院で行われるのではなく、医師が病人の家を訪問して診察にあたる訪問診療が日常でした。その際に医師は、全身を観察するのはもちろんですが、主な検査として脈をとり、排せつされた尿を見ていました。

 ヨーロッパには病室の風景を描いた名画が数多くあり、オランダの画家ヘラルト・ダウ作「水腫の女」には、フラスコ状の瓶に採尿した尿を透かして観察する医師の姿が描かれています。診療所のような小施設では今でも、医師が検査技師を兼ねていて、実際に採取された尿を観察していますが、規模の大きな病院では作業が分担化され、医師が直接尿を見る機会は少なくなっています。

 そのためか、視尿術の価値は相対的に下がっているようです。一例ですが、血液がんの化学療法中に現れた溶血現象が血尿と判断され、内科的な検索の前に泌尿器科へ紹介されたケースを、私は経験しています。

 では、尿の性状でどのような疾患を考えるのか。柿色の尿は肝臓胆管疾患の際に現れます。赤ワインのような尿は、溶血の際に現れる血色素尿や、激しい運動の後に筋肉の色素が尿に現れるミオグロビン尿などで見られます。

 赤血球が混じった血尿は、薄いときのピンク色から、時間がたったときのコーヒー色まで色調は程度によってさまざまです。腎炎などの腎臓病や、尿路がん、結石などの泌尿器科疾患で見られます。濃い場合は時間がたつと上澄みと沈殿物に分かれてきます。黄色から白色の混濁した尿は、尿路感染の際に現れます。炎症の強い際には血尿も混じってきます。

 白濁した状態でも尿のPH(ペーハー)や温度の状況で現れる塩類尿は異常ではありません。アルカリ尿の際には家庭にある酢を加えても透明になります。

 最後に沖縄県で診療する際に忘れてはならないのが乳び尿です。牛乳のような尿で、フィラリア虫感染の後遺症ですが、現在でも高齢者に時折見られます。視尿術は専門家でなくても、特別な器具も必要とせず、家庭で簡単にできます。体調が悪いと感じたとき、透明なガラス瓶に尿をとって観察してみるといいでしょう。どの専門医を受診したら良いのか、その後の指針を得られるかもしれません。(金城勤・牧港泌尿器科)